土木構造物標準設計 Q&A

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 平成11年3月に改訂された「道路土工−擁壁工指針」において、擁壁に衝突荷重を考慮する場合の設計の考え方が新たに 規定されております。その内容は、衝突荷重の荷重強度と作用位置、安定計算及び断面設計時における設計の考え方であり、 このうち、ご質問の安定計算については、一つの衝突荷重をブロック全体で受け持つものとしていますが、その際の安全率に ついては特に触れていません。
 従来から、擁壁の安全率については常時と地震時に対して規定されており、その安全率の違いは異常現象の生起確率に依存 しています。衝突荷重を考慮した場合の擁壁の安定性照査については設計者に委ねるかたちになっていますが、衝突荷重は短 期であり、発生確率の低いものと一般的には解釈できます。これまでも、通常規模の擁壁においては、衝突荷重に起因した大 きな損傷の報告はなく、常時あるいは地震時で決定された擁壁には衝突荷重に対しても一定の安全性が確保されていることが 経験的に知られています。しかし、規模が小さい場合やブロック長が短い擁壁の場合には、衝突荷重が支配的な荷重となるこ とも予想されますので、防護柵を擁壁から離して土中に設けることも一つの選択肢です。
 現行指針における安全率の由来や根拠はよくわかりませんが、この安全率については材料、設計・施工段階における種々の 不確定要素に経験的な要素を加えた総合的な判断によって決定論的に決められたとも言われています。本来、安全率は、材料 の種類、荷重の種類あるいは荷重組み合わせなどに応じて考えた方が合理的であり、これについては、近い将来に性能照査型 設計法へ移行する中で採用されるであろう、限界状態設計法が解決してくれるものと期待しています。
 平成12年9月に全面改定した標準設計では、これまでどおり、一般的な荷重組み合わせである常時、地震時を考慮してお り、衝突荷重の影響については考慮しておりません。したがって、衝突荷重を考慮する場合には、現地の条件に応じて別途検 討が必要になることを付け加えておきます。


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