■技術資格試験合格体験記

  技術士のすすめ
 〜資格取得による知識・技術の向上〜


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門:港湾及び空港)
 〔資格取得年度〕
  平成27年度


工藤 寛之(くどう ひろゆき)
国土交通省 九州地方整備局
港湾空港部 計画企画官
  1.受験の動機

 私は国土交通省に入省して、港湾空港関係の土木技術系の公務員として働いております。
 国家公務員はみなさんご存知のとおり、1年、2年と短いスパンで異動があることに加えて、予算や法令、調整等の業務に携わることも多い ことから、じっくりと腰を据えて波浪や土質、交通計画などの専門的な知見を深めることが難しいと感じるようになりました。
 そのため、技術士に挑戦して、資格取得の過程で広く自己の技術力や専門性を高めよう!と思ったのが、技術士の受験のきっかけです。
 また、公務員はコンサルタントや建設会社とは違い、技術士が資格要件として求められることはありませんが、技術士という資格を有する ことで、発注者としてもしっかりと受注者と議論を行うことが可能となり、受注者任せにせず、より良い仕事が出来るだろうと思ったことも動 機の一つです。

 2.筆記試験対策

   筆記試験、口頭試験ともに2019年度より大幅に改正されるということですので、あくまで私が受験した当時の体験を記載致します。
 筆記試験のうち、選択式(必須科目)では、まずは技術士の過去問を徹底的に勉強しました。同じようなことを問う問題が複数回出ることも 多かったことから、過去問の傾向が非常に参考となりました。また、過去問を精査すると、一般的な建設業や国土交通行政の動向が問われる ことも多かったことから、最新の国土交通白書を何度も精読し、国土交通省の最新の取組や施策、昨今話題となっている社会情勢をしっかりと覚えるようにしました。
 記述式についても、やはり過去問が役に立ちました。過去問において、どのような記述を求めているのか、出題者の問題意識をイメージしながら、実際に手を動かして作文することを繰 り返しました。特にインフラの老朽化対策、国土強靱化、少子高齢化と人口減少、ライフサイクルコスト、港湾空港の国際競争力強化、等々の社会的な課題をしっかりと考えながら記述す るトレーニングを重ねました。
 また記述式については、自己の経験を踏まえた記述能力が求められることから、実務での経験の総点検も非常に重要です。過去に自ら携わった審議会や業務において作成した資料、報告 書にしっかりと目を通すことで、記述に求められる専門性を身につけることが出来たと感じます。
 記述については技術や専門性を深めて知識を習得する力と、その知識を短時間で文章としてまとめる力、という二つの能力が問われます。 過去に出題された題材を参考としながら、それぞれの能力の研鑽に励むことが必要であると感じました。


 3.口頭試験対策
 
   口頭試験では、事前に作成した業務経歴書から問われることが多いため、筆記試験の対策と同様に、過去の業務で携わった資料や報告書の見直しを徹底的に行いました。
 波浪や地盤等の自然条件を踏まえ、現場ではどのような課題があり、その課題に対してどうしてその工法を採用したのか、また工期、工費、施工性等を鑑みてもなぜそれが優位であったの か等について、論理的に説明できるように心がけました。
 また過去の業務経験とともに、技術士としての適格性も口頭試験では問われます。特に、技術士法上の3義務(信用失墜行為の禁止、秘密保持、名称表示)及び2責務(公益確保、資質 向上)については、条文も含めて頭にたたき込みました。
 口頭試験では少なからず緊張していることから、事前の準備を行うことが重要です。どのような質問に対しても、自分の言葉で説明できるように、必要に応じて、実際の想定問答を作成 することや、先輩職員に試験官として質問してもらうことも有効かと思います。
 また、テクニカルな点としては、自分が説明しやすい業務や、長く携わって思い入れのある業務を中心に経歴書を作り込む、ということも 大切だと思います。

4.受験者へのアドバイス等

 技術士取得を通じて痛感したことは、やはり常日頃の業務経験が、如実に筆記試験、口頭試験には
現れてくるということです。
 付け焼き刃の試験対策での対応は難しいため、毎日の業務において、技術的な能力を向上して専門性を高めることが、回り道なようでも技術 士取得の近道かと思います。技術士の責務としても掲げられているように、常に自らの知識や技能などの資質向上を心がけて下さい。
 受験者の皆さん、頑張って下さい!