■技術資格試験合格体験記

  試験改正された技術士の
 取得を目指して


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋)
 〔資格取得年度〕
  平成27年度


熊谷 兼太郎(くまがい けんたろう)
国土交通省 国土技術政策総合研究所
津波・高潮災害研究官
  1.受験の動機、経緯

 受験の動機ですが、日頃から仕事を通じて先輩技術士の方々と接しており、技術士という存在に関心がありました。また、技術者として長 く働くために、専門的能力を目に見えるかたちで示す資格の取得が有用と考えました。そこで、技術士のうち建設部門(河川、砂防及び海岸・ 海洋)を受験しました。
 受験の経緯は、平成24年10月に第一次試験を受験しました。大学で土木工学を学んでいたため共通科目は免除で、それ以外の試験(基礎、 適性及び専門の3科目)を経て、合格することが出来ました(なお、平成16年以降に日本技術者教育認定機構(JABEE)が認定した教育 課程を修了した方は、第一次試験を免除されます)。その後、仕事の都合などがあり1年を空けて、平成26年度に第二次試験を受験しました。 まず、8月の筆記試験(必須1科目及び選択2科目)を受けました。さらに、12月の口頭試験(経歴・応用能力、技術者倫理、及び技術士 制度その他の3科目)を経て、合格することが出来ました。第二次試験に合格すると、氏名、部門などが官報に掲載されます。
 念のため、令和元年度に試験方法が改正されています。技術士に求められる本質的な部分は変わらないと思いますが、第二次試験の必須科 目が択一式から記述式になるなどの変更があります。令和2年度以降の受験準備をされている方は、改正して初めての年にあたる令和元年度 の出題内容を確認したうえで、今後の試験に臨んで頂ければと思います。

 2.第一次試験

   基礎及び適性の部分、また、専門(すなわち、建設部門)の部分について、それぞれ多くの市販書籍が出版されています。私は、そのうち建 設部門の書籍を復習のため通読しました。なお、受験当日の朝、試験会場である自宅近くの大学の門をくぐったとき、久しぶりに試験を受ける ためか学生に戻ったような緊張感があったのを覚えています。
 JABEE認定により一次試験を免除になる方もいらっしゃると思いますが、技術士に求められる資質などの基礎的知識を確認する意味でも、 第一次試験対策の書籍を手に取って見てみると良いかも知れません。

 3.第二次試験
 
 筆記試験(必須科目)

   試験方法が改正された令和元年7月の試験は2つの設問のうち1つについて記述式で答案用紙3枚以内にまとめるものでした。設問のテーマは それぞれ生産性向上に関するもの、国土強靭化に関するもので、いずれも4つの小問が設定されていました(詳細は、日本技術士会のホームページで 公開されています。実際の問題をご覧下さい)。出題対象は建設部門全般であり、テーマを予想して絞り込むのは難しいと思います。 従って、時事的なものも含め国土交通分野の動向を幅広く知っておく必要がありそうです。 対策は、例えば国土交通白書や、キーワードをまとめた市販書籍の活用が考えられます。また、令和2年度以降も小問の形式などが踏襲される かどうかは分かりませんので、注意が必要です。

 筆記試験(選択科目)

   令和元年7月の試験は、複数の設問のうち合計3つについて記述式で回答するものでした。いずれも、受験者の方がこれまで培われた経験 を活かしつつ、規定時間・枚数で文章にする必要があります。事前準備では、例えば過去問題を本番と同様に解いてみるのが良いと思います。 また本番試験では、論文を書き始める前に要点メモを作ることをお勧めします。メモがあれば、必ず盛り込むべき項目の書忘れといったミスが 減りますし、全体の章立てを可視化できて時間配分を考えるのに役立ちます。メモはきちんとした文章の必要はなく、章番号、タイトルと、 それぞれにキーワード数個を問題用紙余白に書くだけで十分だと思います。
 
  口答試験

  実務能力(コミュニケーション・リーダーシップ、評価・マネジメント)、及び、技術士としての適格性(倫理、継続研さん)を問われる 見込みです。私は、試験申込み時に作成した業務経歴票を見直すとともに筆記試験で書いた内容を思い出すことで、口頭試験に備えました。

4.資格の活用

 技術士の資格は入札の加点や監督者の要件の対象となっていたり個人の専門的能力の目安となっていたりして、色々な面で活用されている と感じます。
 また、読者のなかには発注者の立場で、日常の業務において受注者と一緒に仕事をしている方がおられると思います。既に過去号に書いて いる方がいらっしゃいますが(2018年10月号本欄)、発注者と受注者は対等の立場ですから、受注者に資格を要求するのであれば発注者も同 等の資格を求められてもおかしくないと私は思っています。この点はあくまで個人的な考えですが、受験の動機の一つとしてヒントにして頂 ければ幸いです。



  絶対一級建築士になる
〜カド番落ちでもあきらめない〜


 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成30年度


 角田 啓一(かくた けいいち)
 
川西市 都市政策部 都市政策課
主任
  1.受験の動機・経緯

   タイトルのとおり、私はカド番落ち(学科試験の再受験が免除される3回目の製図試験で不合格となること)を経験し、再度学科試験に合 格してから、2回目の製図試験でようやく合格することができました。
 とても長い道のりでしたが、資格学校への通学や、通信講座、独学など様々な経験をすることで、自分にあった学習方法を確立し、最終的 には学科、製図ともに独学で合格することができました。これまでの経験を整理し、お伝えすることで、これから受験を考えている方や受験 生の方の参考になれば幸いです。

 2.様々な学習方法

   一級建築士試験は、相当な学習量や学習時間の確保が必要となります。また、試験は1年に1回のため、仕事や生活とのバランスを図りな がら、厳しい学習を継続する根気や環境も必要です。
 このような状況の中で、まずは自分にあった学習方法を確立することが重要です。
 まず、資格学校への通学は、高額な費用が掛かかるとともに、生活も学習最優先となり、受験に向けて相当の準備と覚悟が必要ですが、良 質な教材や自分の弱点に合わせた指導を受けることができるメリットがあります。また、毎年7月の学科試験と10月の製図試験に向けて綿 密なスケジュールが組まれており、目標管理が苦手な方やストレート合格を目指す方におすすめです。
 次に、資格学校やインターネットの通信講座です。通信講座は、通学ではないため自ら学習計画を立てる必要がありますが、一般には販売 していない教材が、通学と比較して安価に入手できたり、講座によっては模試や添削を受けることができるメリットがあります。受験費用は 抑えたいが、新傾向問題や課題に対応したい方や、仕事や生活とのバランスを考えた学習を望む方へおすすめです。
 最後に独学ですが、通信講座と同様に自ら学習計画を立てる必要があるとともに、新傾向の問題や課題に対応できない不安はあります。 しかし、市販の過去問題集(過去7年分など)や製図の課題集などで、学習が可能です。初受験者よりも、試験概要や出題傾向を把握した受験 経験者におすすめです。
 このように、様々な学習方法があるので、職場や生活環境をはじめ、ご自身の学習スタイルなど様々な要素を勘案して検討することで、自 分に合った学習方法がきっと見つかるはずです。

 3.傾向と対策

   前述した様々な学習方法を経験した上で、学習のベースとして大切にしてきたことを学科試験と製図試験別にご紹介します。

  学科試験編

 過去問を中心に学習を進めている方は、新傾向問題に対する不安が大きいかと思います。しかし、新傾向とはいうものの、過去問のリニュー アル問題が多々あることも事実です。難易度が高い試験ではありますが、そこは資格試験と割り切り、過去問を繰り返し解いていくことが合 格への近道となります。私の場合、問題ごとに解いていくと解答番号を暗記してしまうため(試験は四枝択一)、1枝ずつ解いていき、間 違えた枝については問題集の解説や参考書を参照することで、知識の定着を図りました。特に法規と構造は問題数も多く、得点源となるので、 早い時期から学習に着手すると効果的かと思います。知識が定着していくと、4枝のうち2枝まで容易に絞ることができる感覚が身について いきます。これだけでも時間短縮になり、焦りからくるミスを防ぐことができます。

製図試験編

 普段の学習においては、練習課題の解答例を暗記するほどトレースしていました。これにより、ある程度の標準プランが確立され、あとは 要求事項に応じて変化させることで、素早くプラン検討を行うことができました。また、繰り返しトレースすることで作図時間も短縮されて いきます。なお、プラン検討にあたっては受験生の多くが採用するような多数派のプランに近づけることが第一ですが、課題文から要求事項 の優先順位を読み取る練習も大切です。
 私の場合、合格した年の本試験時に、外部との出入口の位置の都合上、どうしても利用者と管理者の動線の一部が交差してしまうプランと なってしまいました。再度プランを練り直す時間はなく、そのまま押し切るか非常に悩み、手が止まってしまいました。しかし、もう一度課 題文を読み直したところ、出入口側の周辺環境との連続性確保の優先順位が高いことが改めて読み取れたことから、最初のプランのままで進 める判断ができました。

4.おわりに

 資格について、職務上必須の場合もあれば、そうでない場合もあり、受験に対するモチベーションはそれぞれだと思います。しかし、建築 技術者として生きていく上で、一級建築士の資格が無駄になることはありません。私の場合は、長年目標にしてきた一級建築士を取得すること ができ、大きな自信を得ることができました。
 最後に、この場をお借りして、試験勉強にご協力いただきました職場の方にお礼を申し上げます。また、最後まで応援してくれた家族に感 謝しています。