■技術資格試験合格体験記 |
技術力を証明する一つの手段として 技術士を取得しよう 〔取得した資格〕 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋分野) 〔資格取得年度〕 平成29年度 |
松浦 俊介(まつうら しゅんすけ) 京都府 山城南土木事務所 企画調整担当 主査 |
1.はじめに〜受験の動機、経緯〜 近年、プロポーザル方式などで発注されるコンサルタントの委託業務では、参加資格の要件として技術士を求めていたり、技術士の保有に 対して加点されるなど技術士の資格が重要となっています。こういったことから、業務を担当されるコンサルタントの技術者の多くは技術士 を保有されています。また、発注者も技術士を保有していることが増えてきました。 このような周りの環境に影響され、また自身のスキルアップにもなると考え、技術士試験を受けることにしました。 2.二次試験の筆記における傾向 試験方法が改正されたことによって、今年度からは必須科目が択一式から記述式に変更になりました。この体験記を書く上でどのような問 題が出題されたかを見てみると、やはり生産性の向上について出題されていました。生産性の向上というキーワードは予想していましたし、 課題抽出と課題に対する解決策も例年どおりです。しかし、そこからさらに掘り下げて、解決策から生じるリスクとその対策などが問われて おり、技術者としての経験がより重視されるようになっています。上っ面の知識だけでは回答できないと感じました。 平成19.24年度試験の必須科目は記述式だ ったようで、日本技術士会のホームページに掲載されている過去問を見てみると、人口減少・高齢化、技術の継承、アセットマネジメント、 社会資本整備のあり方、地球環境問題などがキーワードとなっていました。 今でもホットなワードなので、これらに加えて、最近のトレンドとして、働き方改革や生産性革命、ICTの活用などがキーワードとして想 定されます。特に河川の分野では水防災意識社会の再構築、ダム再生、大規模広域豪雨を踏まえた水災害対策、平成30年7月豪雨を踏まえ た避難のあり方などが想定されます。これは外せないキーワードだと思います。 3.二次試験の筆記における対策 このように想定したキーワードに対して、現状と課題、対応策などを体系的に整理しておけば、必須科目だけでなく選択科目の記述式にも 対応できると思います。 私は基本的に面倒くさがりなので、記述式については、過去問に対して回答を作成することや想定問題を作って回答を作成することはしま せんでした。 唯一、先ほど述べたようなキーワードを想定し、そのキーワードに対して現状と課題、対応策などを体系的に整理し、内容を確実に理解し た上で試験に臨みました。内容を理解していれば、記述式で何を書けば良いかわからないということはないと思います。 キーワードの整理と理解には国土交通省の審議会や検討会等の資料が役に立ちました。これらは国土交通省のホームページで公開されてい ますので確認してみてください。 4.口頭試験における傾向と対策 受験された先輩方がホームページ等で想定QAや再現QAを掲載されていますので、それらを参考にしながら自分用の想定QAを作成しました。 これは受験者全員がされることと思いますが、私は可能な限りたくさんの想定QAを用意しました。そのため、面接官からの意地悪な質問に対しても、 想定QAを組み合わせることで何とか回答することができました。 また、試験の申込時に記載した経歴に対しても質問されます。詳細に記述した業務内容はプレゼンできるほどに準備しておくことが必要で すが、列記した経歴1つ1つに対しても質問されますので、業務の概要、課題、問題点、解決策を整理しておく必要があります。 5.おわりに〜受験者へのアドバイス等〜 ところで皆さんは、「かし」「かいり」「じんそく」「ぜいじゃく」「けんさん」「ぎせい」などを漢字でスラスラ書けますか。 私は日頃からパソコンの漢字変換に頼り切っているため、試験当日「瑕疵」が出てこなくなり、思い出すまでにかなりの時間を要しました。 少し違った視点からのアドバイスですが、受験される部門で使用する単語については試験直前に見直しておくことをお勧めします。そうすれ ば、貴重な時間を無駄にすることなく、記述に集中できると思います。 |
ものをイメージできることの重要性 〔取得した資格〕 一級建築士 〔資格取得年度〕 平成29年度 |
林 正紀(はやし まさのり) 川西市 都市政策部 公共施設マネジメント課 課長 |
1.はじめに〜受験の動機・経緯〜 一級建築士の取得を意識するようになったのは社会人になってからです。業務に関する分野で何か国家資格を取得したいと思ったのがきっ かけです。 初受験は平成14年でした。当時はまだ、学科4科目(計画・法規・構造・施工)、製図試験は5時間30分の旧制度時代でした。その後、 生活環境が変わり5年間受験から離れたのち、ようやく平成29年に合格しました。合格に至るまでに実践したことや考えたことについて、 いくつか紹介させていただきます。これから受験を考えられる皆様、そして、今まさに受験中の皆様にとって参考になることがあれば幸いです。 2.学科試験における傾向と対策 学科試験は、計画・環境・法規・構造・施工の5科目で、各科目、概ね20問から30問の4者択一マークシート式で出題されます。 広範多岐にわたる出題で、各科目ごとに最低点が設定されています。 得意分野と不得意分野がはっきりしていた私にとって、学科試験は「足切り」との闘いでした。当時なじみのなかった計画、環境、施工の いずれかで最低点に到達できず不合格を繰り返しました。 私が行った対策は、過去7年分の試験問題が掲載された過去問題集で、解答の解説がイラスト付きで充実しているものを買い、受験まで3 回ほど繰り返し解きました。 受験する年の4月に問題集を購入し、必ず苦手な科目から勉強を始めました。私の場合は、計画、環境、施工から勉強を始めました。 解答の解説のうち、特に図やイラストがついているものは、何回かノートに書き写して覚えるようにしました。また、解答の解説を読んで もピンとこないものは、ネットを援用したり、職場の先輩に聞いたり、職場にある建築関係の仕様書を見るなどして、完璧に理解できなくと も概要がイメージできるようにしました。例えば、計画で出題される施設整備事例から誤りを選択する問題で、「〇〇団地は、〇〇を解消す るために建替えられた低層住宅群である」という問題の場合、「〇〇団地」が本当に低層住宅群であるかどうか、をネットで画像検索して調 べるなどです。 3.製図試験における傾向と対策 約3,000平米の敷地が与えられ、午前11時から午後5時半までの6時間半の間で基本計画を練り、A2サイズの用紙1枚とA3サイズの用 紙1枚に提案書をまとめて提出する試験です。 出題される建築物は、単一用途ではなく、複数の用途を1つの施設に複合化させることが求められ、各用途を適切にゾーニングすること、 利用者が迷わないこと、管理者が適切に管理できることが製図試験ではキーポイントになっているようです。このポイントを外してしまうと、 他ができていても不合格になる恐れが高く、逆に、キーポイントを外していなければ、他が少々できていなくても合格の可能性が高くなるよう、 経験上思います。 試験対策ですが、1年間だけ資格学校へ通いました。製図試験では、特に作図時間との闘いになります。私は、概ね3時間で仕上げるよう 練習をしていましたが、道具を持ち替えるのにどうしても時間がかかり、練習段階では3時間の壁を破ることができませんでした。この状況 を打開すべく、資格学校側からの指導もあり、フリーハンドによる作図に切り替えました。フリーハンドでの作図に切り替えることにより、 道具を持ち替える手間が減り、私にとっては安心感につながりました。 エスキスは、沢山問題を解くよりは、典型的な2.3パターンの問題を選んで復習することと、復習するときは、各書室の配置の順番まで つぶさに暗記するのではなく、エントランスからロビーを介して各ゾーンへ動線がどう流れていくかを復習すればよいと思います。 私が合格した平成29年の試験では、受験生に「コンセプトルーム」を自由提案させ、図面化と用途・内装しつらえを記述する問題が出題 されました。 予想外であり、どう設計しようか戸惑いましたが、たまたまプライベートで訪れた、とある道の駅の直売店の空間のイメージを思い出し、 一か八かで、そのイメージを参考にしながら解答した記憶が残っています。 製図試験も数回受験しましたが、事前の練習問題では予想できない「何か」が必ず問われるのも製図試験の特徴であると思います。 4.おわりに 合格するまでそれなりにエネルギーを投入することになると思います。なかなか結果に結びつかないこともあるかと思いますが、時間がか かっても「自分を信じ続けること」「いつか絶対合格する日が来る」と思い続けることが一番大事かと思います。時間がかかってしまったな か、励まし続けていただきました職場の皆様へはお詫びと感謝を申し上げたく思います。 また、私の経験として1点だけお伝えしたいのですが、私生活でも色々と建物に触れる機会が多いと思いますが、このときの空間体験を、 建築屋として自らの印象に残すことは、職能として非常に大事であると思います。今後、私が建築士として業務に携わるうえで大事にしてい きたく思っています。 |