■技術資格試験合格体験記

  資格取得にチャレンジすることが
 自信とスキルアップにつながる


 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋分野)
 〔資格取得年度〕
  平成29年度


樫 智徳(かたぎ とものり)
京都府建設交通部砂防課
課長補佐兼係長
  1.受験の動機、経緯
 技術士資格は地方公務員とは無縁のものと思っていましたが、ある職場において何名かが既に資格を取得され、あるいは受験勉強に努力さ れている姿に触れるにつれ、自分も一度チャレンジだけはしてみようという気になりました。
もちろん、資格をとったからといって公務上の役割や給与手当が増える訳ではありません。
年々低下する暗記力と闘いながらなんとか一次試験を突破したものの、記述式の二次試験にはかなりの不安がありました。しかし、結果はど うあれ資格取得へチャレンジする意欲と受験勉強が自己啓発につながること、技術職としてのこれまでの経歴・経験が知識・技能としてどれ だけ身についたのか試してみたいという気持ちもあり、続いて二次試験に挑むことに
しました。
結果的に、2回の挫折を経て3回目に合格しています。

 2.筆記試験における留意点や学習のポイント
 二次試験は択一式と記述式の出題がありますが、1年目、2年目は択一式の突破に四苦八苦しました。4月に受験申込をしてから 市販の参考書を買い込み、用語と過去問題を中心に択一式の勉強を始めたのですが、私流の勉強方法は出勤前のトイレの中での15分間の読書タイム で、過去問を毎朝5問程度ずつといった感じです。せめて半年くらい前からこつこつと勉強していれば記述式の鍛錬に時間を割く余裕もできたのですが、 受験申し込みからの3か月程度では択一式の勉強だけで精いっぱいだったように記憶しています。結局、1年目は勉強の要領がつかめず択一式で つまずく結果となりました。
 記述式に関しては、参考書に示された論文の書き方指南を拠りどころにしました。専門知識が問われる選択科目U、課題解決能力が問われる選択科目Vとも、 過去の出題の傾向、解答のポイント、論文中の「見出し」の付け方、記述例を参考に、想定問題について解答の方向性と見出しを整理することで作文につなげるイメー ジを何度か練習しました。字数と時間を意識して実際に論文を書いてみるといった余裕はありませんでしたが。
 出題の傾向への対策については、自身の経歴から得意分野は河川計画であるため、二次試験は河川、砂防及び海岸・海洋分野を選択しましたが、河川以外の 砂防や海岸・海洋、あるいは、河川でもダム等に関する専門的な論述は非常に困難です。選択科目U、Vとも少なくとも1.2問は河川に関する出題があることを期待し、 得意分野に絞った準備をすることにしました。
例えば、治水・防災に関しては、全国的にも大規模な水害が発生した時に新たな課題が顕在化すると、そのたびに国が専門家を交えた検証会議を立ち上げられています。 そこでは課題の要因と新たな施策や取組が提言されますので、これらの報道発表資料等をホームページで確認し試験に臨むようにしました。実際、試験の前日 にたまたまチェックした内容がそのまま出題されたラッキーな年もありました。

 3.資格取得後に役に立ったこと
 資格取得したからといって職場での境遇に変わりはありませんが、自分にとって受験勉強の努力が報われたこと、経歴・経験から身についた技術力が 認められたことが、今後も建設行政に携わっていくうえで少なからず自信につながったと思います。
 また、合否よりも受験勉強そのものがスキルアップにつながったと思える部分も多く、択一式では建設業に切迫する課題の現状や環境問題などについて、 普段は目にすることのない国土交通白書の統計データに驚き、認識を深められましたし、論文に悩んだことでは、仕事で障害に遭遇した場合にも、 何が課題か、解決策は何かと、論理的な思考が自然に働くようになった気がします。

4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 技術系職員として実績を重ねると、年々経験値は上がりますがその分記憶力は低下します。一次試験と二次試験必須問題ではこの記憶力と の戦いとなりましたが、出題には必ず傾向があり過去問題の研究が最も近道だと思います。1回読んで覚えられないことが繰り返し勉強すれ ば案外身につくものだなということを実感しました。
 また、論述は試験直前にいきなり練習してもなかなか上達は望めないと思いますが、長年続けている馬上、枕上、厠上の読書タイム(コミ ックを含む)が作文への抵抗を少なくし、キーワードをそれなりにつなぐ文章を書く訓練になっていたのかなと思います。
 あとは、家族の手前、受験するからには何度でも挑戦し合格したいという執着心も、後押しになりました。



  マイペースにこつこつと
 一級建築士資格取得への道のり


 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成30年度


 原紺 純花(はらこん あやか)
 
国土交通省 中国地方整備局
営繕部 整備課
  1.はじめに
 この度、一級建築士資格取得の体験記寄稿のお話をいただき、試験勉強の日々を思い返してみたところ、悩みながらも自分に合った無理の ない計画を立てて勉強を進めることができていたことが最後まで勉強を続けることができた理由だと気づきました。そこで本稿では、私の勉 強の計画の立て方と内容をお話したいと思います。この体験記がこれから一級建築士を受験される方にとって少しでも参考になれば幸いです。

 2.受験動機
 私は小さい頃からものを作ることが好きでした。そのうち、人が喜んでくれる大きなものを作る人になりたいと思うようになり、一番身近 で自分の生活に密着している大きなものである「建物」に興味を持ったことで建築士を志すようになりました。その後大学に進学し、今の職 場に就職したときに、一生建築に関わっていくために、ひとつ自分の強みとなる資格を持ちたいと思うようになりました。知識が豊富な職場 の方々と同じ目標を持った先輩・同期に囲まれ、就職して1年ほど経ったときに、明確に「一級建築士一発合格」を目標にして、小さい頃から の夢を実現すべく勉強を始めました。

 3.試験勉強

   試験勉強をする中で一貫して意識していたのは、勉強の計画は自分に合った無理のないものにすることです。私は日々の勉強の計画をきっ ちりと立ててしまうと、計画が崩れたときにモチベーションが下がり長続きしない性格だとわかっていたので。ここからは、そんな私が実践 していた勉強方法について、筆記試験と製図試験と分けてお話します。
 まずは、筆記試験です。私は筆記・製図試験ともに資格学校でお世話になりました。週に1回授業があったのでその前日に予習、翌日に復 習を行い、その他の日はそれぞれ重点を置くことを決めて、取ることのできた勉強時間に応じてできるところまで進める、といった計画を立 てていました。具体的にお話すると、平日の勉強時間は基本的には帰宅後4時間程度、「構造力学5問、法規5問」という毎日の最低限のノ ルマだけ決めて、あとは得意な科目を中心に問題数を多くこなすことに重点を置きました。朝出勤前に法規、帰宅してすぐに構造力学を解く ようにし、スマホに過去問を入れて隙間時間も有効に活用できるようにしました。休日の勉強時間は10時間程度、苦手な科目に時間をかけて、 単元ごとにしっかり理解することに重点を置きました。また、これは平日も休日も同じですが、夜遅くまでしても効率が下がる一方なので、 勉強は23時までにしてリフレッシュの時間を取るようにしてました。このおかげだったのか、最後まで気が滅入ることなく最後まで勉強ができました。
 次に、製図試験です。筆記試験のときと同様に週1回授業があり、平日4時間、休日10時間、23時までにしました。内容としては、資格学 校で配布される課題をこなすことに専念することにして、一課題エスキスをすることを毎日の最低限のノルマとして、ひとつの課題を最低2 回は解くようにしました。1回目は時間内に全ての条件を満たすことを目標にし、2回目は1回目で検討が不十分だった箇所やミスをしてし まった箇所を修正し自分なりのパターンを作ることを目標にしました。また、私は資格学校のクラスのなかで一番エスキスが遅かったため、 図面を速くきれいに描く練習は誰よりもしたと思います。その結果、図面を描くスピードは格段に上がり、はじめは4.5時間かかっていた ものが2.5.3時間程度で描くことができるようになりました。


4.資格を取得して
 資格取得後約半年経ちますが、私自身の能力が急成長したわけではないので、仕事では毎日分からない用語にぶつかり続けているのが現状 です。しかし、試験勉強中に本気で悩み、試行錯誤しながら自分にとってベストの勉強方法や生活リズムを確立させる過程で、自分というひ とりの人と改めて向き合うことができ、モチベーションを高く保ち続けるための方法がわかったり、時間の使い方が少し上手になったこと は、これから社会人として働いていくうえで必ず役に立つスキルを身につけることができたかなと思います。


5.おわりに
 これから受験される方へのアドバイスですが、とにかく何よりも自分に合った無理のない計画を立てて、それを最後まで貫くようにしてくだ さい。勉強をしているとどうしても周りの人と比べてしまい、焦って苦しくなってしまうときもあると思います。そのようなときでも、「毎 日仕事しながら勉強もするなんて、よく頑張っている!」と自分を褒めて、乗り切ってくださいね。私は、自分で決めた毎日の最低限のノル マをこなし続けられたことが大きな自信になりました。
 最後に、この一級建築士資格取得を実現できたのは、職場の方々や両親、友人らの支えがあったからこそです。この場を借りてお礼を申し 上げます。本当にありがとうございました。