■技術資格試験合格体験記

  プレーヤーからマネージャーへ。
総合技術監理部門取得のすすめ。


 〔取得した資格〕
  技術士(総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成28年度


井上 真仁(いのうえ まさひと)
 水産庁漁港漁場整備部整備課
   性能規定係長
  1.はじめに〜受験の動機・経緯〜

 現在、私は北海道から水産庁に出向しており、技術士の総合技術監理部門(以下、総監部門という)の取得は北海道在籍時でした。 当時の立場は道庁にて水産基盤整備事業の計画策定や設計に関する指導を行っておりました。 北海道には沿岸だけで12の振興局、さらに多くの出先機関があり、組織全体を効率的に指導していくためには総監部門の取得が必要だと考えました。

 2.筆記試験における傾向と対策

 1)択一試験対策
 私にとっては記述試験よりも択一試験のハードルが高かったです。個別部門と異なり、問題を選択することは出来ず、「正しい(間違った) 選択肢の数」を問われるので全ての選択肢の正否を判断しなければなりません。
 対策は過去問と青本がベースになります。私は過去問の徹底的な分析を行い、出題者の視点に立ち、もし間違った選択肢を作成するなら、 どこを変えるかを考えて、正しい選択肢、間違った選択肢から重要な部分を重点的に覚えました。

2)筆記試験対策
 過去問を見ると、最初の方に何を書いてあったか忘れるほど長い文章が並んでおり、難しい試験だと感じる方も多いと思います。 しかし総監部門の筆記試験において問われていることは非常にシンプルな内容です。
 プロジェクトを進めるにあたって状況が変化する前後で、それぞれどのようなリスクがトレードオフとなって顕在化してくるか。 そのリスクの顕在化を未然に防止し、プロジェクトを最適化するためには5つの管理のバランスを考え、管理技術をどのように使うかを問われています。
 長い問題文に惑わされることなく、自ら設定したプロジェクトに対して5つの管理の視点から記述するのみです。しっかりと総監部門の試験を 理解し対策をしておけば、どのような出題にも対応可能です。

3.口頭試験における傾向と対策
 口頭試験は総監部門の頭に切り換えることです。試験官のさりげない質問の中にも、総監技術士としてどう考えるかを問われています。
 例えば、インフラの老朽化についてどう考えますか?という問いに対して。個別部門であれば、点検、診断、予防保全といったことを回答します。 総監部門では、予防保全によるコスト縮減(経済性管理)、技術者不足(人的資源管理)、廃材の発生抑制(社会環境管理)等の5つの管理から トレードオフを考え即座に回答しなければなりません。どんな変化球が飛んでくるかわかりませんので普段の業務で意識してトレーニングすることが効果的だと思います。

おわりに〜名マネージャーを目指そう!〜
 水産部門、建設部門の技術士も取得していますが、実務に最も役に立っているのが総監部門であり、勉強が一番楽しかったのも総監部門です。
 どのような業務の中にもトレードオフが潜んでおり、相反する事象を無理にクリアしようとすると、さらに新たなトレードオフが生まれることもあります。 例えば、正確性(品質)を確保しようとすると、工程が遅れがちになります。工程も間に合わせようとすると複数班を構成したり、外注したりコストの問題も出てきます。 また、残業が続き、担当者のモチベーションが低下するかもしれません。他にもコストばかり注視し、安全面や環境面がおろそかになることもあります。
 自分が担当者として、品質も工期も確保し、環境や安全にも配慮しながら、残業が続いても元気でいられる分には、それで良いかもしれませんが、 人を指導する立場では、それが正しい指導とは言えないと思います。
 限られたコストと人材と情報を活用して、安全や環境に配慮し、品質の良い成果を工期内に完成させるには
どうしたらよいか。
 限られた条件下では全項目で100点を求めるのは困難です。そのため、最重要項目だけは高い得点を目指し、残りは及第点でも良いかもしれません。 うまく全体のバランスを取って最適化を図るのが総監の概念だと思っています。
 部下を持つ立場や指導する立場になった場合には、それまでのプレーヤーではなくマネージャー(マネジメントする立場)として頭を切り換えなければなりません。 1つの管理がどんなに優れていても他の管理で落第点があれば行政技術者として、組織としての正解ではないと思います。もちろん私もまだまだ未熟であり、実践出来ていると は言えませんが、考え方は非常に勉強になりました。
 なぜ、総監部門の受験資格に個別部門の技術士が必要なのか。それは個別部門の技術を理解した上で、トレードオフ事項へのメリハリを判断できる技術者が求められているからだと思います。
 個別部門の技術士を取得された方の多くはマネージャーとしての立場を担っている、もしくは近いうちに担う予定だと思います。ぜひ総監部門にチャレンジして名マネージャーとなって 自らのスキルアップとチーム力向上を図りましょう!乱筆ながら皆様の受験の契機になれば幸いです。