■技術資格試験合格体験記 |
なぜ一級建築士を目指すのか 〔取得した資格〕 1級建築士 〔資格取得年度〕 平成26年度 |
柳田 真俊(やなぎだ まさとし) 広島市市民局 市民活動推進課 技師 |
1.はじめに〜受験の動機・経緯〜 受験前、先輩から「一級建築士は知識があるだけではなく状況の変化に対応できる人、つまり一定の判断能力がある人だ」と教わりました。 また、ある建築家は、「設計とはその判断に対して報酬を得るもの」と述べていました。 要するに、判断に対してお金を得る行為はその道のプロという事であり、建築業界でプロとして生計を立てていくには、膨大な知識を有す るだけでなく判断能力を養う必要があります。その判断能力を養うことができる建築士は必要な資格だと思い、勉強を始めました。 しかし、私は合格するまで以下のとおり5年もかかりましたので、参考になりにくい部分もありますが、勉強方法、判断のポイント、モチ ベーションの上げ方を中心に私の経験をお伝えしたいと思います。 【1年目】学科:合格(資格学校) 製図:不合格(結婚等で勉強不足) 【2年目】製図:不合格(資格学校) 【3年目】製図:不合格(転職等で勉強不足) 【4年目】 学科:不合格 ( モチベーション保てず) 【5年目】学科・製図:合格(独学) 2.学科試験対策 学科は、どれだけ勉強したかに尽きると思います。 当時、私は住宅関係の仕事をしていたので住宅関係以外の法規・構造等が勉強でき、勉強時間が確保できる資格学校(1年目)へ通い、平 日は1.3時間、休日は6.8時間勉強していました。また、資格学校には同じ志を持つ仲間やライバルがいるため、モチベーションを保つことができました。 勉強方法は、過去問を解いてから教科書を見るというやり方で、過去問を3.4回解きました。まずは全体を把握するため、1回目を素早く終わらせました。 2回目からは分野毎にじっくり研究(暗記事項や関連事項をまとめる)しながら解きました。時間はかかりましたが、3回目以降は短時間で終えることができました。 3.製図試験対策 1年目は本格的な勉強が出来なかったので、2年目は勉強方法が学べて勉強時間が確保できる資格学校に約2か月間通いました。その時の勉強方法は、問題を多く解き、作図スピードを 上げるために図面枚数を多く書いていました。いま思えば、いかに早くパズル(試験問題)の正解を導き出すようなことばかり考えていましたが、実際に正解はなく自由度の高い試験に全 く通用しませんでした。 具体的にお伝えしますと、練習問題では敷地形状を読み込むと、部屋の配置が概ね予測できるものでしたが、実際の試験はどの配置でも当てはまり、判断に迷うものばかりでした。 その結果、エスキスが上手くまとまらず、不合格となりました。 製図試験は年々自由度を増しています。そのため、3年目以降は問題数をこなすのではなく問題の意図をじっくり読み取り、設計意図を分かりやすく伝えられるような勉強方法に変えま した。そのおかけで、独学で合格することが出来ました。 参考に試験本番での時間配分をお伝えします。 @エスキス(2時間10分)、チェック(10分) A計画の要点等の記述(50分) B作図(3時間)、チェック(20分) 最後のチェック時間が重要だと思います。作図中は集中しているので間違いに気が付きませんが、冷静になってチェックすれば減点はかなり防げます。 また、迷いが生じたときは、課題の主旨とは何か、施設の目的とは何かなど原点に立ち返って判断しました。 4.独学での勉強方法 学科は、過去問を中心にひたすら勉強するとともに、モチベーションを保つため、資格学校の模擬試験を受けました。 製図は、独学といってもインターネットでの通信講座(約5課題)を受講し、過去に合格した人の図面についての研究やエスキスを中心に 勉強しました。エスキスは2時間以内で終わらせる練習を繰り返し行い、出来ない場合は原因を突き止めました。 独学は課題に対する情報量が少ないため、一緒に勉強する仲間を探して情報交換や模擬試験を行いました。 5.おわりに〜受験者へのアドバイス〜 一級建築士は、相当な勉強量が求められること、仕事や私生活に影響されること、取得しても直ぐに報酬等に反映されにくいことなど モチベーションを維持していくことが非常に難しいです。私の場合は、目標に向かって一緒に勉強する志の高い仲間や周囲の協力があったことで、 学科から振り出しになって諦めかけていた時でも、励まされて気合いを入れ直すことができました。 最後に、今まさに勉強されている方や受験を検討されている方は、一度始めたら合格するまで諦めず頑張ってください。また、人それぞれ、 職場や家庭環境は異なるため、勉強時間を確保することが難しい場合もありますが、できる限り早く自分なりの勉強方法を見つけてください。 私は、結婚、転職、引越など私生活が目まぐるしく変化する中で、どうしても勉強時間が確保できない時がありました。そのため、合格する まで時間はかかりましたが、判断能力のある「プロ」に成りたいという目標をかかげ、諦めずに頑張ったからこそ合格することが出来ました。さ らには、仲間からのアドバイス、職場、そして家族からの応援があったからこそ取得出来たと思っています。この場を借りて御礼申し上げます。 |