■技術資格試験合格体験記

自分に合った学習方法の確立 　　　〜１級建築士試験を通して〜 　〔取得した資格〕 　　１級建築士 　〔資格取得年度〕 　　平成29年度

山�ｱ　荘太郎（やまさき　そうたろう） 　国土交通省　住宅局 　住宅総合整備課　研修員 　（熊本市から出向・主任技師）

1．受験の動機・経緯 　１級建築士の試験は、年々試験の難易度が上がっていることから、近年ではほとんどの受験者が資格学校に通って回答のテクニックや勉強 方法を学び、試験を受験している状況です。 　私は、職場からの当該資格受験に対する金銭的な補助があまりないこともあり、自費で高額な費用を払ってまで資格学校に通う気にはなれ なかったので、独学での受験に挑戦しました。自分の周りには同じような受験の仕方をした人がいなかったため、学習方法を自分で考える等、 試行錯誤が必要でしたが、無事合格できたので、その体験についてお伝えしたいと思います。これから受験を考えている方々の参考になれば幸 いです。 　2．学科試験対策 　学科試験は４択のマークシート方式で、計画、環境、法規、構造及び施工の５科目について、全ての合計点だけでなく、一つひとつの科目そ れぞれにおいても合格基準点以上の点数をとる必要があります。 　学習方法としては、書店で購入できる直近７回分（７年分）の過去問題とその解説が載っている問題集を利用し、１ヵ月に１回分（１年分）のペースで 問題を解き、その後解いた問題（４択全ての選択肢）の内容を理解するという方式を取りました。内容の理解には、その問題集の 解説を使いましたが、それだけでは理解できない部分もあるため、インターネット等で情報を得て理解を深めます。 　得意不得意の差が大きい自分にとっては、苦手分野をなくし、各科目の合格基準点を下回らないことがとても重要だと感じたので、既に完全に理解が できている選択肢については印をつけて次から読まないようにし、未だ理解できていない選択肢に目を通す頻度が高くなるよう工夫しました。 これを１ヵ月の間に何度も繰り返します。 １ヵ月の勉強が終わってもまだ理解できない選択肢が何割か残りますが、それらは次の月以降も読むこととします。 　この方法により、５回目以降の過去問題を解く頃には合格点を取ることができるようになり、本番も合格することが できました。 　3．設計製図試験対策 　製図試験は問題文・条件の読み取りから設計製図、計画の要点の記述等を６時間半以内に行うというとても過酷な試験です。 　学科試験と比べて製図試験はとても難易度が　高く、指定条件が複雑すぎて、最初は計画案が全くまとまりません。また、独学の場合、自分 が考えた計画が良い計画か否かを客観的に評価することが難しいため、練習しても自分が成長しているかどうかがよく分からず、その不安が 練習を続けるうえで大きな支障となります。 　このことから、独学で勉強するうえで一番重要なことは、モチベーションを保ち、練習を持続できる方法を考えることだと思いました。 　考えた末、難易度が高すぎてやる気がなくなるということが無いよう、比較的簡単な２級建築士の製図試験の対策問題から練習することと し、練習の開始時期については、学科試験が終わる７月下旬から練習を始めていてはとても間に合わないと考えたので、心の余裕を持つため に６月上旬からとしました。 　１級建築士製図の練習は、平成21年度以降の過去問題８問と、書店で販売されているその年の設計課題に合わせた予想問題の問題集（４問）を 使用して行います。毎回本番のように６時間半の練習を行うことは精神的に大きな負担となり、継続ができないので、２時間の時間制限で、 プランニング（エスキス）の練習だけを毎朝行いました。具体的には、１つの問題を何度も解いて何パターンも計画を作成し、標準回答例と自分が 作成した図面を見比べて、合格できる計画とできない計画にはどのような違いがあるのかを自分なりに整理する作業を行います。 これらの作業はかなりの労力と集中力を要するにもかかわらず毎日行うので、継続できるよう、できるだけ楽しみながらやることを心がけました。 　作図の練習については試験日の６週間前ごろから開始し、平行定規による製図では無くフリーハンドでの作図を選択しました。これは、 今後の役に立つ可能性の無い平行定規を、この試験のためだけに練習する気持ちにはなれず、モチベーションを維持するためにも、気軽なフ リーハンドのほうがいいと思ったからです。 　その年の試験は、試験中に少し焦ってしまったため条件の見落としがあり不合格となってしまいましたが、次の年の受験では精神的な余裕 もあり、無事、合格することができました。 　4．おわりに 　今回の受験を通して、試験問題に出てくる知識だけでなく、何かを継続する力や集中力、状況に応じた判断力など、多くの面で成長するこ とができました。また、独学での学習であったため、自分の能力や性格を客観的に評価し、自分に合った勉強の方法を自分自身で考え確立す るという習慣が身につきました。 　とても過酷な試験ですが、得るものも大きいです。これから受験をする方はぜひ頑張ってください。