■技術資格試験合格体験記

  体系的な技術力を身につける

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門:都市及び地方計画)
 〔資格取得年度〕
  平成27年度


小林 昌季(こばやし まさき)
東京都都市整備局市街地整備部
防災都市づくり課 主任
  1.受験の動機・経緯
 日々の業務の中で、まちづくりや基盤整備に携わっていると、複数の専門分野に跨って技術 的な知識が必要となることが多くあります。5年前、私が土地区画整理事業を進めていたとき、 既に建設部門・選択科目道路での技術士は取得していましたが、業務の中で適切な判断を行う ためには、道路分野だけでなくまちづくり分野についての知識を補う必要であると感じていま した。専門的な知識が不足する中で技術的判断を行うことは、事業のミスリードに繋がる恐れ があるからです。
 そのため、まちづくり分野の技術を体系的に身に付けたいという動機と、実務での工夫を試 みる中で、まちづくりの経験も蓄積されてきたという実感もあり、「都市及び地方計画」の専 門で技術士の資格を取得しようと考えました。
合格したのは、挑戦し始めて2回目です。

 2.受験申込書の留意点
 技術士の試験において、経歴書は口頭試験において「受験者の技術的体験を中心とする経歴 及び応用能力」を判断するうえでの基礎資料であり、その重要性は高いと考えます。
 業務経歴は、単に業務名等ではなく、技術的に業務の特徴を的確に伝える表記に留意しまし た。また、業務内容の詳細は、「立場と役割」「業務上の課題」「技術的な提案」「技術的な成果」 を簡潔に分かり易く取りまとめました。
 特に、「業務上の課題」と、これに対する「技術的な提案」の内容は、口頭試験の中で、技術 士として必要な応用能力を確認されるポイントであると考え、技術的な難易度が高い課題か、 また解決に向けた考え方のプロセスや対応策の妥当性などが、技術士として相応しい内容にな っているかなど、何度も推敲を重ねました。

 3.筆記試験における傾向と対策
  1) T必須科目
 「技術部門全般にわたる専門知識」を問う問題で、択一式、20問中15問選択回答、配点は 30点です。回答時間は1時間半あり、比較的余裕がありますが、択一の成績が合否判定基準 に満たないものは選択科目の採点を行わないとされていることから、試験中は確度の高い問題 の選択に留意しました。
 対策としては、出題される範囲は広範囲ですが、その多くが過去問と同様の傾向があること から、国土交通白書などを参考として、過去問の頻出分野を中心に、周辺知識を帳票にして整理しました。

  2) U選択科目
 「選択科目に関する専門知識及び応用能力」を問う問題で、2問構成の選択記述式、600字 ×4枚以内で配点は40点です。回答時間は2時間あり、1枚30分を目安に答案を作成でき ますが、記述内容を推敲する余裕はあまりありませんでした。
 対策としては、選択科目に係るキーワード毎に法体系などの関連知識を整理する一方で、実 際の実務にあたっての検討方針や留意すべき点などについて、自らの実務を振り返り、帳票を 作成し整理しました。

  3)V選択科目
 「選択科目に関する課題解決能力」を問う問題で、記述式、600字×3枚以内で配点は40 点です。時間は2時間あるため、全体構成に20分程度、1枚30分を目安に回答を作成できます。
 対策としては、過去問を参考として、いくつかのテーマ毎に、その背景となる政策的課題や 関連する法律・行政施策、実務上の対応方針や留意点などを多角的に整理する中で、論文作成 の練習を行いました。可能ならば、論文作成にあたっては、技術士の資格を取得した方に添削 してもらうことが大変勉強になると思います。

4.口答試験における傾向と対策
 口頭試験では、「経歴の内容と応用能力」と「技術士としての適格性及び一般知識」が問われ、 それぞれ60点と40点の配点です。時間は20分程度であり、簡潔に答えるように心がけました。
 対策としては、受験申込書の「業務内容の詳細」に記載した内容に対して、課題に対して技 術的な提案に至った検討プロセスや、代替案はなかったか等、詳細な想定問答を作成し準備し ました。

5.資格取得後の実務に役立ったこと
 資格取得を目指して勉強を重ねる中で、選択科目における法制度や技術的な知識が体系的に 整理できたことから、実務上の課題に対して自信をもって対応方針を考えられるようになりま した。

6.受験者へのアドバイス等
 技術士を取得するために積み重ねた知識や、論文作成で身に付く論理展開の方法などは、実 務上も役立つ機会が多いと考えます。何回か試験に挑戦することになったとしても着実に技術 力が向上していると実感できると思いますので、諦めずにがんばってください。



  健忘と集中力低下に抗して、隙間時間の
 活用と繰返し勉強法で技術士を目指す


 〔取得した資格〕
  技術士(上下水道部門)
 〔資格取得年度〕
  平成29年度


 工藤 修一(くどう しゅういち)
 
福岡市 博多区役所 地域整備部長
  1.受験の動機、経緯
 職場において若手技術者を指導する立場にある者として、自信をもって指導を行うためには、 経験だけではなく、最新の技術力の習熟が必要です。
 また、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の施行に伴い総合評価制度が導入され、 私も受注者の技術的能力を評価する者として登録されました。
 受注者の技術提案を適切に審査・評価するために高い技術力を持つことが求められました。
 これらのためには、技術力を証明できる資格である技術士も取得したいと考えたことが動機 でした。

 2.健忘と集中力低下に抗した戦い
 試験勉強は平成28年4月から開始しました。
 私は、技術士補となるための第一次試験から挑戦する必要がありましたので、先ずは平成 28年10月9日の第一次試験を目指しました。
 第一次試験では、適性科目、専門科目、基礎科目があります。
 適性科目は技術者倫理や技術士の義務等の問題で解答が容易と感じた一方で、基礎科目の数 学や化学・物理等の問題の難しさに唖然としました。
 また、試験勉強を開始すると、「知識がないこと」と以上に、「物覚えが悪いこと」「勉強継 続の体力・集中力がないこと」を自覚して、愕然となりました。
 健忘は、加齢とともに気がかりでしたが、試験勉強の中では、覚えるべきことがはっきりす るので、忘れ易いことが改めて自覚させられました。
 勉強した内容を翌日には忘れてしまい、専門用語を思い出さないことが度々続くと、勉強の 継続意欲も削がれて、悲しくなりました。
 また、机に向かっても照明灯下の字が読みづらいうえに、体力や集中力もなく30分程度で 飽きてしまう不甲斐なさに、情けなくなるばかりでした。
 そこで、勉強は机上以外を活用して、通勤時や昼休み等の隙間時間を活用して毎日2時間以 上を確保し、飲んで帰っても寝る前には必ずテキストを読むという、「何度も目を通し、忘れ る前にまた覚える作戦」(繰返し勉強法)を遂行しました。
 ダラダラとした勉強方法でしたが、早めに着手したことが功を奏して、やっとのことで平成 28年12月15日に第一次試験に合格しました。
 次の目標の、技術士となるための第二次試験の筆記試験は、平成29年7月17日に行われま した。筆記試験は、必須科目、選択科目U、選択科目Vです。
 勉強習慣を継続したうえに、必須・選択科目の16年度から28年度までの過去問題について 全て模範解答を作成して、さらに、「下水道におけるICTを活用した水処理技術」や「能動的 水環境管理」、「雨水公共下水道制度」等の予想問題も19問準備しました。
 筆記試験前の半月間は、答案用紙に手書きで解答を書く練習も行いました。
 そして、平成29年10月31日に第二次試験の筆記試験に合格しました。
 口頭試験は、平成29年12月17日に東京で、10時20分から40分までの予定でした。
 口頭試験では、業務経歴と受験申込書に記載した業務内容の説明から始まりました。
 その後に質問されたことは、受験動機、抱負に関してや、技術士法(3義務2責務等)に関 して、技術者倫理や資質向上に関してで、質問は数問程度で終了しました。
 試験時間は短く感じたため、これでは絶対に不合格と落ち込みましたが、幸いにして、平成 30年3月9日に第二次試験の合格の発表がありました。

 3.職場の先輩たち等からの激励
 試験勉強を始めてから2年の間、辛くて涙を 流して下を向いた時もありましたが、職場の先 輩たち等から励ましや助言をいただきました。 合格まで辿り着けたのは周囲の後押しのお陰 です。

 4.学習のポイント

    1)筆記試験における対策
 筆記試験の突破には、解答できる多くの知識と経験を有することはもとより、文章を適切に 書く能力が必要です。
 先ずは、過去問題について解答例を作成して、文章をまとめる能力の向上を図ります。
 次に、法律や技術基準の改定、新しい法律やマニュアルなどの技術の動向について情報を集 めて、予想問題を作りましょう。
 筆記試験では、選択科目Uが120分間に3問を2,400字、選択科目V が120分間に1 問を 1,800字で手書きの解答を行いますので、試験時間が短く、解答を校正する余裕や書き直しも できませんので、記入訓練は必須です。

  2)口頭試験における対策
 口頭試験の対策では、経歴票記載業務の内容のプレゼンテーションの練習が必要です。
 筆記答案に不足があれば補充の説明を求められるので、答案の補足説明分の準備も行いましょう。
 口頭試験の現場で戸惑うことがないように、準備した想定問答をもとに、面談方式により繰り返し訓練をすることも良いでしょう。
 最終的には、自分自身の技術者としての力量に自信をもつことです。
  
5.資格取得後に役立ったこと
 技術士の取得により、少しばかり自分自身の技術力に自信を持つことができたように思います。
 さらに、最新技術への興味が高まったことも、予期せぬ効果です。
 若手技術者への指導に際しても、これまで以上に厳しく指摘するとともに、技術の細かい点 まで注意するようになりました。

受験者へのアドバイスと励まし
 私は、健忘と集中力低下に苦しめられながら、技術士の資格を取得することができました。
 年配の技術者の方も、諦めずに、技術士の資格取得へ取り組まれることをお勧めします。
 前に向かって歩み続ける意欲が湧いてきますよ。