■技術資格試験合格体験記

  発注者としてのスタートライン

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門[河川、砂防及び海岸・海洋])
 〔資格取得年度〕
  平成29年度


山口 耕平(やまぐち こうへい)
 佐賀県県土整備部
 佐賀土木事務所
 道路整備第一課主査
  1.受験の動機・経緯

 私は、大学卒業後、コンサルタントに勤務をしており、当時の上司の方々は皆技術士を取得 しバリバリ仕事をこなされていました。その姿を見て、私もいつかは技術士を取得したいと思 うようになるのは自然なことでしたが、その後、佐賀県庁へ転職したことから一時的にその気持 ちが消えかかっていました。
 しかし、入庁して3年目にようやく一次試験に合格できたことがきっかけで、県庁内の技術 士の先輩方から勉強会へ誘っていただき、「ここで諦めたら今までの努力が無駄になる。一生 後悔する。」との思いから、二次試験合格へ向けた勉強を始めました。
 ここでは、実際に私が実践した勉強法等についてご紹介させていただきますが、来年度以降、 技術士試験制度が改正される予定であり本稿の内容が参考とならない場合があると思いますが、 ご容赦ください。

 2.受験申込

 1)業務経歴

 私は入庁して15年目となりますが、佐賀県の場合2.3年ごとに部署異動があることから、 私が実際に河川事業に携わっていたのは7年程度でした。
 そのため、私が河川部門で受験するには業務経歴が足りないと判断されるのではないかとの 不安がありましたが、先輩方から「河川以外の経験も積んでいることをアピールすればいい。」 とのアドバイスを受け、自信を持つことができました。
 実際に、5つ記載する業務経歴のうち4つは河川業務について記載しましたが、残り1つは、 道路事業について記載しました。

 2)業務内容の詳細

 まず、自分が携わった業務の中から、自分の考えを提案し、成果や達成感が得られた業務を 複数選び、とりあえず「業務内容の詳細」の形に沿って文章にしました。
 そして、口頭試験の想定問答をイメージしながら1つの業務に絞り込み、先輩技術士の方々 に添削してもらいながら仕上げていきました。
 業務内容の詳細については、必ず自分が受験する部門と同じ部門の技術士の方に添削しても らうことが重要だと思います。

 3.筆記試験対策

 1)択一式問題

 20問中15問を選択して解答し60%以上が合格基準なので、9問以上正解すれば合格基準に 達します。一見するとクリアできそうな気持ちになりますが、その出題範囲は広範囲であり、 最初はどこから手を付けたらいいのか分かりませんでした。
 そこで私は、まず過去5年分の過去問題の解答を覚えるまで繰返し解き直しました。
 過去問題をほぼマスターした後、市販の問題集を3冊購入し、これらも同様に問題を覚える まで繰返し解き直しました。
 択一式問題の勉強のポイントは、昼休みの時間等、少しでも空いた時間を見つけ、1問でも 多くの問題を読みこみ、問題に慣れることだと思います。

 2)記述式問題

 技術士の勉強を始めた頃、記述式の過去問題を初めて読んだ時は、こんな問題をどうやって 回答すればいいのか途方に暮れたことを覚えています。
 そのような中で、まず行ったのは過去問題と先輩方の復元論文の収集です。そして、その復 元論文の情報を更新しながら自分の文章にして書き写していきました。そうすることで、回答 を書くことへの抵抗感を減らし、文章の流れをつかむことができました。
 その際のポイントは、あまり文字数を気にせずに自分の言葉で文章にしていくことです。例 えば、自宅で制限文字数に合わせた解答を作成したとしても、本番では、その半分も書けない ことがありました。逆に、制限文字数以上の解答を書いておくと、本番でも余裕を持って対応 できると思います。
 また、国土交通省のホームページや国土交通白書等から情報を集め、想定外の問題が出たと しても対応できるように、知識の引出しを増やしておくことが重要だと思います。

 4.口頭試験対策

 まず行ったことは、情報集めです。口頭試験を経験された先輩方からの復元問題や市販の問 題集等を参考にしながら項目ごとに想定問題集を作成しました。
 次に、想定問題集の問題のみを自分でボイスレレコーダーに録音し、昼休みや移動中に聞き ながら自問自答を繰り返しました。
 また、先輩技術士の方々に模擬面接を実施していただいたことで、実際に人前で説明するこ との難しさを体験することができました。口頭試験を受ける際は、ぜひ、模擬面接を受けるこ とをお勧めします。

5.おわりに

 今現在、技術系公務員が資格を取得したとしても報酬面等で優遇されることはなく、逆に、 資格を取得していなくても一定の給料は保障されています。
 そのような状況の中で、いかに資格取得に向けたモチベーションを維持していくかが難しい と思います。私は、発注者も受注者も対等の立場であるならば、受注者だけに資格を求めるの はおかしいという思いから勉強を続けてきました。
 そして、今回取得した技術士と既に取得している一級土木施工管理技士を合わせて、やっと 発注者としてスタートラインに立つことができたという気持ちです。
 技術士を取得したからと言って、突然技術力が上がることはありません。私は、技術士を取 得はしましたが、技術者としては、まだまだ仮免許状態と思っています。今後も地域の方々に も信頼される職員となれるよう自己研鑽に努めたいと思います。