■技術資格試験合格体験記

  俯瞰的な視点で考えるために

 〔取得した資格〕
  技術士(総合技術監理部門)
 〔資格取得年度〕
  平成28年度


白木 久也(しらき ひさや)
 国土交通省 中部地方整備局
富士砂防事務所 副所長
  1.受験の経緯、動機
 国土交通省地方整備局の仕事を行うためには、多方面の知識や判断力が求められます。私は、 習得度合いを確認するためや、仕事に必要な知識と判断力を得るために各種国家試験を受けて きました。
 工事監督検査に1級土木施工管理技士・労働安全コンサルタント、XRAINやICT活用に第 一級陸上無線技術士、施工計画環境対策確認に公害防止主任管理者、除草工事集草焼却にダイ オキシン類公害防止管理者、水質事故対応に甲種危険物取扱者・一般毒物劇物取扱者、用地立 会に宅地建物取引士、ダム管理に一級小型船舶操縦免許、健康管理に第一種衛生管理者、技術 提案書評価に技術士建設部門の知識と判断力が必要と考え受験し、合格に至っています。
 技術士−建設部門−河川、砂防及び海岸・海洋の資格を得たのち、主たる業務が専門技術的 なことから業務全体の監理技術的なことに移っていることに考えを巡らせ、俯瞰的な視点でも のごとを考える必要を感じました。
 そこで、自信を持って、より高い成果の追求や後進の指導を行いたいと考え、監理技術に関 する高い能力を証明する「技術士(総合技術監理部門)」の資格を取得するために受験勉強を 始めました。
 技術士(総合技術監理部門)資格取得後は、技術士会に入会し研究会活動等によりICT技術 や労働安全に関する知見を広げ、公共サービス提供に関するマネジメントの勉強を続け、業務 に活用しています。

 2.筆記試験における傾向と対策
 技術士試験は一次試験と二次試験からなり、一次試験の合格者または指定された教育課程(JABEE認定課程) 修了者のみが二次試験を受験できます。俯瞰的な視点でものごとを考えるための技術体系である、 技術士試験の総合技術監理部門について、その傾向と対策について述べます。
 最初に、技術士二次試験総合技術監理部門選択科目について述べます。総合技術監理部門は、 「必須科目」と「選択科目」の両者に合格する必要があります。その「選択科目」は、他の 20部門における(必須科目)及び(選択科目)と同一内容です。「必須科目」と「選択科目」 を同一年度に受験することを併願と言います。合格者のうち併願の合格者は、平成29年度で 326名中4名(1.2%)であり厳しい状況でした。したがって、併願よりは、一般部門に合格し「選 択科目」を免除されたうえで受験すると合格率が高いと言えます。
 次に、「必須科目」について述べます。「必須科目」は、5管理(経済性管理、人的資源管理、 情報管理、安全管理、社会環境管理)を用いて、トレードオフを考慮して全体最適化を図る方法 を問われます。形式は40問の五肢択一式と3,000字以内の記述式1題であり、配点は各50 点、合計100点満点中60点以上が合格です。その「選択科目」である機械.原子力・放射線ま で全ての科目で同じ問題ですが、記述式は、(選択科目)と同じ分野の内容で書く必要があります。
 記述式問題は、一般部門に比べて時間に余裕があります。一貫した内容を一定時間で論術的 にまとめる練習を行えば、本番に焦らないで対処できます。
 短期間で合格するためには、五肢択一式で高得点を上げることが有効です。そのためには、 幅広く管理技術の知識を習得しておく必要があります。プロジェクトマネジメント標準 (PMBOK)や、マズローの要求5段階説などの理解について、再度復習する必要があります。

 3.口頭試験における傾向と対策
 筆記試験の合格者に対して口頭試験が実施されます。口頭試験では、専門技術の視点ではな く総合技術監理の視点からの解答が求められます。総合技術監理の視点は、出来事を5管理で 考えるトレーニングと、中長期での組織管理の視点が重要です。

4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 平成29年度の合格率は、公益社団法人日本技術士会統計情報1)によると、一次試験の建 設部門が49.2%、二次試験の建設部門−河川、砂防及び海岸・海洋が12.8%、総合技術監理部 門−建設−河川、砂防及び海岸・海洋が7.9%となっています。試験問題は、世の中のトレン ドに沿った基本を問うものが多いです。
 技術士(総合技術監理部門)の受験は、メリットがない、受験料が高い、不合格であったら はずかしい、などという声も聞きます。しかし、合格すれば、自己効力感が高まり、自己の人生 に活かされます。
 また、得られた知識・監理技術は、異業種の技術者の視点を理解することに繋がり、グロー バルな視点で思案できる機会となります。
 以上、技術士試験に対する傾向と対策、アドバイス、励ましについて述べさせてもらいまし た。そのことを理解していただき、ぜひ、技術士(総合技術監理部門)を受験することをお勧 めします。

引用文献:
公益社団法人日本技術士会編:統計情報   https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02013.html



  挑戦して良かった技術士試験

 〔取得した資格〕
  技術士(建設部門:道路)
 〔資格取得年度〕
  平成27年度


磯 杏奈(いそ あんな)
 
群馬県 太田土木事務所
副主幹
  1.受験の動機・経緯
 技術士という資格については、大学の教授が取得していたことから学生時代から知っていま したが、難関資格であり自らが取得することは難しいだろうと思っていました。
 そのため、一次試験に挑戦してからは、ずっと二次試験に挑戦していませんでした。
 このような私が二次試験を受験しようと思ったきっかけは、当時の所属長が熱心に受験を進 めてくださったことです。近くに技術士の先輩がいたことが資格取得挑戦のきっかけとなり、 今ではとても良かったと思っています。

 2.受験申込書
 受験申込書には、「業務経歴」「業務内容の詳細」を記載します。
 申込書は口頭試験の際に使われるためしっかり作った方がよいというアドバイスを参考図書 等で見ましたが、口頭試験を受けてその通りだと実感しました。
 私の場合は、提出前に当時の所属長に添削してもらうことができとても幸いでした。

1)業務経歴
 「業務経歴」の「業務内容」には、単に業務名を記載するのではなく、業務の特徴や目的が 分かるように記載すると良いというアドバイスをもらい、記載方法を修正しました。「業務内容」 を記載できるスペースは少ないですが、どのような業務に携わってきたのかを試験官に知って もらうという気持ちで記入すると良いと思いました。

2)業務内容の詳細
 経歴の中から、「業務内容の詳細」を記載する業務を選び、720文字以内で立場や役割、成 果等を記載します。
 業務上の課題を解決するために、どのような技術提案を行い、どのような成果が得られたか が分かるようにまとめるよう努めました。

 3.筆記試験
 筆記試験は、「T必須科目」(択一式)、「U選択科目」(記述式)、「V選択科目」(記述式)で 構成されます。
 配点は、「T必須科目」が30点で、「U選択科目」が40点、「V選択科目」が40点です。
 合格基準は、それぞれ60%以上となります。

1)択一式
 20問中15問を選択して解答します。
「「技術部門」において不可欠な技術、業務遂行に際して必要な社会制度等に関する専門的な 知識」が問われます。出題される範囲は広範囲にわたるため、過去問題を使って勉強すると効 率的だと思いました。
 なお、択一式の成績が合格基準に満たない場合は、記述式の採点が行われないため、択一式 も手が抜けないと感じました。

2)記述式
 「記述式」では、専門知識や応用能力が問われる「U選択科目」と、課題解決能力が問われ る「V選択科目」が出題されます。
 Uについては600字×4枚以内、Vについては600字×3枚以内を、それぞれ2時間以内に 記述しなければならないため、時間的な余裕はありませんでした。
「U選択科目」では、
 @主として専門知識を問われるもの
 A応用能力を問われるもの
が出題されます。
 @については、4問中2問を選択し、原稿用紙各1枚以内にまとめます。Aについては、2 問中1問を選択し、原稿用紙2枚以内にまとめます。どの問題を選択するかにあまり時間をか けてしまうと、解答作成に使える時間が減ってしまうため、事前に時間配分を考えておくと良 いと思いました。
「V選択科目」では、2問中1問を選択し、原稿用紙3枚以内で解答します。
 問われている内容に対して、漏れなく解答できているかを意識しながら記載すると良いと思 いました。
 「記述式」については、過去に出題された内容のほか、国土交通省のホームページや技術系 雑誌で最近話題の事柄を情報収集するとともに、課題や解決策を整理しておくと良いと思いました。

 4.口頭試験
 口頭試験では、「T経歴の内容及び応用能力」と、「U技術士としての適格性及び一般的知識」が問われます。
 配点は、Tが60点で、Uが40点です。合格基準は60%以上となります。
 2名の試験官で行われ、試験時間は約20分でした。
 私は、ほかの受験者の方が書かれている口頭試験再現資料などを読ませていただき準備しました。非常に参考になりました。
 また、「T経歴の内容及び応用能力」では、筆記試験の記述内容についても質問されることがあるため、参考図書等で書かれているとおり、 筆記試験後に記述内容を再現し、残しておくことが大切だと感じました。


 5.おわりに
 私に技術士受験を進め、勉強会を開催して手助けをしてくださった先輩がいたことで、技術 士資格を取得することができ非常に感謝しています。
 この春、総合技術監理部門(建設.道路)も取得することができました。
 今後も日々自己研鑽し、業務に励みたいと思います。