■技術資格試験合格体験記 |
建築士としての第一歩 〔取得した資格〕 一級建築士 〔資格取得年度〕 平成28年度 |
国枝 寛明(くにえだ ひろあき) 岐阜市都市建設部 市街地再開発課 主任技師 |
1.はじめに〜受験の動機、経緯〜
私は、小さいころから工作が好きだったこともあり、中学生の時に建築の道に進むことを決めました。一級建築士の取得は、大学で建築学 科を専攻した時から「いつか取得しよう」と思っていました。しかし、入庁後職場上司の多くが一級建築士免許を持っていること、職場先輩 が試験を受けていることから受験資格が得られたらすぐに始めようという決意に変わりました。 2.学科試験 私は一級建築士試験を受験するにあたり資格学校へ通いました。勉強方法等について、考える手間がなく、基本から応用までを順序立てて 合理的に勉強を進められるので、与えられた課題をこなしていくことで効率のよい勉強が進められます。また、資格学校には同じ一級建築士 を目指す仲間がいるため勉強のモチベーションを保つことができます。もちろん、予習や復習といった受講時間以外の自主勉強は必要となり ます。 学科試験は、計画・環境・法規・構造・施工の5つの分野から四肢択一の問題が計125問出題されます。学科試験におけるポイントは目標 点数の設定です。学科試験は明確な合格点が定められていません。90点という目安はありますが、各年の難易度に応じて補正されるため、1、 2点で悔しい思いをした方もいるかと思います。私も悔しい思いを2回した一人です。そこで私の場合、3度目の学科試験の目標は100点。 つまり8割以上を目指すことにしました。 私の勉強スタイルは、膨大な知識を詰め込むために暗記科目は昼休みなど短い時間を活用し、多くの時間を確保できる週末に理解力が必要と なる構造に充てました。 具体的な勉強方法は、過去問を解くことを中心に行い、自信を持って四肢全ての正誤判別がつくまで繰り返し行いました。 得点をよりアップするためには得意科目を伸ばすよりも苦手科目を勉強した方が効果的です。 特に法規と構造は、2科目で全体の約半分を占める科目であるため苦手科目ではなく得意科目にしたいところです。 法規は法令集を持ち込むことが出来るため、いかに自分が早く引くことのできる法令集を作ることが重要です。私の場合は基本的な線引き、 インデックスのほかに引くのに時間がかかる条文や間違えることが多い条文に大きな目印をつけました。 3.製図試験 学科試験後も勉強は続きます。二次試験の製図試験は、設計要求を満たす建物を6時間30分という短い時間で設計しなければなりません。 製図の課題は毎年7月下旬に発表され、10月上旬に試験が行われます。勉強できる時間は学科から受験する場合、試験の翌日から約2ヵ月 しかありません。この2ヵ月で課題に即した要求を時間内に完成させるスキルを身につけなければなりません。当然、時間内に要求された提 出物を完成させなければ、採点の土俵に上がることは出来ません。 私は、手書きの図面は大学の授業で描いて以来全く描いていないため、最初はトレースだけで5時間かかるレベルからスタートしました。 私の勉強スタイルは、作図はまとまった時間を要するため土日に行い、平日はエスキスと記述を中心に勉強しました。作図にまとまった時 間を取れない場合は、躯体に20分、建具に15分、断面に30分といった形で作図の段階ごとに時間を定め、練習することもありました。 作図は時間との勝負であるため、常に時間を意識して作図を行っていました。 作図における一番のロスは手を止めること、次に消しゴムで消す作業が生じることです。作図におけるロスを減らすためには、完成度の高 いエスキスを作ることがポイントです。完成度の高いエスキスを目指すため、1つの課題に対して複数のパターンを考える(例えばスパン割 を変えるなど)ことは重要です。 計画の要点等の記述は例文をひたすら覚え、設問やエスキスに応じて覚えた例文を組み合わせる勉強をしました。記述は、自分のプランと 齟齬(そご)が生じないためにもエスキス後に行うことを勧めます。 参考として私の製図手順は以下の時間配分で行いました。 @課題の読み込み(20分) Aエスキス(2時間)、チェック(10分) B計画の要点等の記述(50分) C作図(3時間)、チェック(10分) 自分にあった時間配分、手順を確立することが重要かと思います。 4.取得後に役立ったこと 学科試験を3回受けたこともあり、建築に関する基礎的な知識が定着し、仕事に対して今まで以上に自信が持てるようになりました。 しかし、一級建築士の資格取得で身につく知識は建築分野における一部であり、一級建築士として今後どのように知識をつけ仕事に向き合うかが 最も重要です。 5.おわりに〜受験者へのアドバイス〜 一級建築士を取得するためには、今まで述べたとおり、かなりの勉強量が求められます。約1年という長い時間を勉強に費やすため、モチ ベーションを保つためにも一発で受かるぞという意気込みが非常に重要です。恥ずかしながら私の場合は取得までに3年という年月を要しま した。一時は諦めようと思った時もありましたが、職場の上司、先輩、同僚の後押しにより諦めることなく勉強を続け、合格することが出来 ました。 これから受験を検討されている方、今まさに試験勉強をしている方、一度始めたら合格するまで諦めず頑張ってください。 最後に一級建築士という資格は、自分一人の力だけでは決して取得することが出来ません。私の場合は、資格学校の先生、職場の上司、先 輩からのアドバイス、同僚そして家族からの応援があったからこそ取得することができました。この場を借りて御礼申し上げます。 |