■技術資格試験合格体験記

  公共工事の品質確保に向けて〜日々の取組みこそが資格取得への近道〜

 〔取得した資格〕
  公共工事品質確保技術者
 〔資格取得年度〕
  平成29年度


丸山 進(まるやま すすむ)
 長野県会計局契約・検査課
  1.受験の経緯、動機
 公共工事品質確保技術者(以下、「品確技術者」という)資格制度は、公共工事の品質確保の促進に関する法律 (以下、「品確法」という)に基づき発注関係事務を適切に実施することができる者を育成することを目的として創設された。 特に品確技術者(T)は、入札・契約方式の選択等の発注関係事務に加えて、総合評価落札方式等の導入・制度検討の助言指導 及び審査における外部委員として発注者支援ができるとされている。
 私は、長野県において総合評価落札方式の制度設計や発注関係事務に10年以上係わり、一定の成果を実感できた一方で、 県内の市町村では品質確保が進んでいない現状も感じていた。このため、市町村の発注関係事務支援の一助となればと 考え資格取得に取り組んだ。

 2..試験の傾向と対策
 1)資格要件
 本試験の受験資格は、A要件として、「公共工事の発注関係事務に指導的立場で5年以上の 経験を有する者」及びB要件として、「公共工事等で総合評価落札方式等に係る発注関係事務 に指導的立場で2年以上の経験を有する者」などの2つで、「指導的立場」については、「本庁 の課長補佐以上、出先機関の課長以上」の例示があるので特に注意を要する。
 2)書類審査
 試験は、先ず書類審査として受験申込時に業務経歴書と2題の論文提出が課される。 業務経歴書は、上記の資格要件を満足する経歴を記載するが、後日行われる面接試験を意識 して内容を精査する必要がある。
 また、論文1は、「B要件にあたる経歴のうち一事例について、概要と直面した課題及び課 題に対して工夫・苦労した点を記述する。」(1,600字以内)で、私は、松本建設事務所時 代に経験した上高地トンネル工事の発注事務について記述した。発電用導水路との近接交差な ど3つの技術的課題については、応札各社から技術提案を求める総合評価落札方式「技術提案 型」を採用することで対応し、また、トンネル工事に係る受発注者双方の県内技術者の「担い 手不足」については、発注者側は経験者に意見を聴く「技術検討会」の開催、受注者側は県内 企業を構成員に含める共同企業体方式とすることで対応した2点について担当課長の立場で記 述した。
 次に、論文2は、「『発注関係事務の運用に関する指針』の位置付けを記述したうえで『必ず 実施すべき事項』の概要を記述する。」(1,200字以内)で、これについては国土交通省のホー ムページから関係資料を入手して記述した。
 なお、字数制限が厳しいので、如何に簡潔明瞭で内容の濃い論文とするかで苦心した。
 3)面接試験
 面接試験(口頭試問)は11月に東京であり、2人の試験官によって受験動機、業務経歴、提 出論文、資格取得後の活動等に関する質問が約30分に渡り行われた。
 結果は、全く手応えがなかったものの約1ヵ月後に無事合格通知を受け取ることができた。 合格率は高かったが、簡単な試験ではなく、むしろ資格要件と論文提出により入口で相当厳し いフルイにかけられる試験と理解すべきか。

 3.受験者へのアドバイス
 この試験を振り返ってみて、受験者へのアドバイスがあるとすれば次の2点だ。
 ・ 日々の業務に真摯に向き合い、より高い価値を目指して努力すること。
 ・ 他の資格試験などを通じて、まとまった文章を書く訓練を続けること。

 スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は「個人のキャリアの8割は予想しな い偶発的なことによって決定される」という計画的偶発性理論を提唱した。私が経験した総合 評価落札方式の制度設計やトンネル工事の発注事務も、この試験のために準備されたものでは ないが、結果として、品確技術者(T)の資格取得に結び付いたと感じている。
 今後は、市町村等の支援を通じて県内公共事業の総合的な品質確保にささやかではあるが貢 献してまいりたい。



  熟成したら旨味も出た〜40代からの受験〜

 〔取得した資格〕
  1級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成27年度


勝長 周悟(かつなが しゅうご)
 
国土交通省東北地方整備局
岩手河川国道事務所
花巻国道出張所長
  1.はじめに〜20年漬け込んだ受験の動機〜
 その昔、1級土木施工管理技術検定を受けようとして願書提出まではしたものの、職務が変わり現場から離れ、 忙しさに負けて事前準備が出来ずに試験を諦めた経緯があります。
 土木技術の世界を職業として目指した時から、いつかは1級土木施工管理技士を目指す、という漠然かつ 当然な使命感はありましたが、いざ受験となると難しいだろうなとか、時間が取れないなとか、 願書提出までの精神的なハードルは高いものを感じており、今度受験するときは自然体で技術力が 発揮出来るようになったら〜と考え……実態は受験しない言い訳のまま、約20年の月日が過ぎて40代に突入。
 その間、職場で技術論を交わす際に、マニュアル傾倒や間違った経験重視で本質議論の出来ない人、 施工性を考慮しない設計に気づかない担当者等との軋轢は多々ありました。
 せめて1級土木施工管理の資格でもあればもう少し自分の発言力も上がるのかしら、とか同僚が こっそり資格取った時に負けてられないと思ったとか、いやそれよりも全建の資格助成金制度がお得!等、 生々しい動機も時々浮かんでは消え、の繰り返す日々。
 そんな折、転勤の内示により4月からの異動先は復興現場。久々の現場仕事に、今度こそ受験する機会かな、 いややっぱり忙しくて無理なのでは、と言う葛藤をしていた頃に、旧知の同僚T君から一本の電話が ありました。曰く、1級土木を一緒に受けよう、と。
 勢いって何事も大事です。彼の背中の後押しがなければ、相変わらず受験を迷っていたかも知れません。 T君には大感謝です。何が大かって、彼は実は電気技術者でしたから。電気と土木の両方一級を目指す彼の活力に牽引されました。

 2..学科試験対策の学習ポイント
 私が取った勉強法は、過去問の問題集を1冊、それと土木工事共通仕様書を熟読することを基本としました。
 まんべんなく知識を深めるのが理想なのですが、現実は中々そうはいきません。
 過去問をやってみて基礎力が足りないと思う分野は、例えば土質調査法や各種便覧、指針など設問に関連した部分を集中して調べ直しました。
 それなりに解答できる分野があったと言うことは、自然体で技術力がそこそこ身についていたという嬉しい誤算。年を取ると物覚えが悪く なってきた自覚もありましたが、経験によるメリットも確かにあったようです。共通仕様書の記載を再確認し、自分の知識の自信を深めるようにしました。
 1級土木の試験については、いくつか出題傾向の高い設問があります。例えば、コンクリートとアスファルトは、品質と施工管理のための 留意点がいろいろと一群的にあるのですが、必ずその中から抜き出した設問が出る傾向があるため、それら一群をノートに知識点検用として まとめました。
 また、施工計画と法規については、問題集の傾向では捨てている受験者が多いようにも感じ、むしろそこは行政経験者としては有利な、選択 問題から外れない得点元と感じて注力しましたし、試験でも手応えがありました。

 3.実地試験対策の学習ポイント
 実地試験に記載する工事経験について、経歴に記載した工事名から該当工事を1本に絞ります。工程管理、安全管理、品質管理、 出来形管理、施工計画等と例年の出題傾向がありますが、望ましいのは1本の工事内容で全てに対応すること。 現場及び工事の説明部分は共有し、テーマにあわせて該当部分を組み替えるのです。パソコンで文章を打ち、文字数を考慮した文章推 敲をしつつ、テーマ部分を色変えして構成し、各テーマ毎の論文を作成、最後にこれを手書きします。手書きすると意外と漢字が書けないこ とがありますので、それを確認しつつ、単語が間違いなく記載出来るよう、また、PC入力よりも手書きが楽な表現に改め、記入時間の目安 を判断します。
 大事なことは丸暗記ではなく、要点と表現の仕方を覚えること。試験では要点とその表現の仕方に注意して論文の核となる部分を確実に記 述し、前後の文脈をつなげるようにすると暗記を最小限に出来ます。

 4.受験者へのその他のアドバイス
 設計及び契約内容にもよりますが、一つの現場において、漫然としか取り組まない現場経験はネタの抽出が少ないです。より良い物を作ろ うとするほど品質管理や施工管理、施工計画等、論文のネタが増えます。日常の現場経験の積み方が合格への近道になるのは確かです。
 また、そう言った内容の濃い工事はその経験内容をメモ書きでも記録を残しておくと論文を書く時の参考になります。
 出題傾向としては時事ネタに要注意。旬な話題は試験に出る可能性が高く、特に労働安全衛生規則などの改正時期と重なると仕事として覚 えなければならないのは当然ですが、それだけ出題可能性も上がります。むしろ得点源確保のチャンスです。

 5.おわりに.40代でも遅くないよ!.
 こうして、40代でも1級土木施工管理技術検定に合格出来ました。漬け込んだ時間にも多少の熟成効果はあったようです。
 合格して感じたのは、漠然とした目標だった1級土木、実はゴールではなく、法規や各専門分野をしっかり勉強するからこそ次の資格を取 る際に大幅な近道となる、スキルアップ登竜門であったということ。
 技術者の誇りが形となった事も喜ばしいのですが、むしろ次は何に挑戦しようか、と気持ちが若返ったように思えました。
 取得がまだの方、あなたも熟成度合いで勝負してみませんか?