■技術資格試験合格体験記

  オッサンでもまだまだいけます 一級建築士高齢取得の可能性 戦い方次第でなんとかなります(たぶん)

 〔取得した資格〕
  一級建築士
 〔資格取得年度〕
  平成28年度


谷山 徹久(たにやま てつひさ)
 愛知県 建設部 建築局
 公営住宅課 建設・改善
 第一グループ 主査
  1.受験の動機・経緯
  〜なぜ一級建築士になろうと思ったか〜

 自分と建築との関わりは、まちづくりに携わりたいという想いと、建築行政職員だった親の影響があり、 その背中を追うように建築を学び、建築行政職員となりました。
 その一方で、建築士の資格は、「建築に携わる者として最低限取得しておくべき代物」という想いがあり、 実際、ビジネス外の建築関係者と話をすると、同じフィールドにいない感がありました。
 加えて、行政職員としては「建築基準適合判定資格者になるうえで必要な資格(正確には合格が必要)」でもあるため、 このあたりが取得理由になります。


 2.この記事で主張すること
  〜世の中の傾向を踏まえて〜

 そんな想いの中、30代も後半とそれなりに年を稼いでしまった中での資格取得に至ったのですが、 自分の周りは優秀で、20代でガンガン取得しています。
 世の中的にも同傾向のようで、国土交通省発表の平成28年度の試験結果によると、一級建築士試験合格者の 年代別割合は、20代が42.5%、20代を含む30代前半までだと69.5%にものぼり、合格者の平均年齢は32.5歳となっています。
 その一方で、受験時の個人的観察結果によると、年配者の受験も多く感じました。若者受験者が圧倒的有利な結果を出している中、 高齢受験者が同じ土俵で戦おうとした場合、以下のようなことが重要になるのだろうと考えています。
 ・ 試験の世界をきちんと把握して、効率的に勉強 ( 体力や脳みその限界点が下がっており、
  気合いとか根性があまり期待できないから)
  ( しかしながら、最後は気合いと根性です。あきらめない気持ちとか。これはこれで重要)

 そんなこんなで、この記事では自分のような「高齢受験者の戦い方や意識の例をお伝えする」ことで、 「高齢受験者の一助や背中の後押し」になればという想いで書き連ねていこうと思います。


 3.重要なこと〜現状把握と目標設定〜
 まず、自分の場合、受験をするうえで、自身の経験や知識による試験対応力からすると、学科と 設計製図の各試験を、1発で合格していくのは難しいかなと感じていたため、各試験を2年かけて 合格していくことをタイム目標としました。
 高齢受験のくせに何を悠長なという意見は甘んじて受けますが、実際、それぞれ2年で合格 (全体では3年で合格)をしており、結果的には時間ロスは小さくできたのではと感じています。
 ここで大事なことは、1年目の敗北に対し、敗因を克服することを2年目の至上目標に定め、 この目標をきちんと結果として出せたことが勝因だったのだろうと思います。
 以下では、各試験の敗因克服経過と、設定した目標を紹介していこうと思います。


 4.学科試験の敗因克服と目標設定
 自分の学科試験の1年目は、構造で足切りの不合格、加えて、施工は経験不足からか点数が 伸びなかったことが敗因でした。このため、2年目はまず点数的な目標設定をしました。
 ・ 試験は5科目125点満点、合格点が90点前半あたり
 ・ 5科目各5点ロス、苦手科目はさらに5点ロス、計30点ロスで、95点取得可能
 これに対して、1年目の敗因克服を含め、科目別の目標設定をしました。
 ・ 足切りだった構造は、いったん理解すれば得点源化できそうな力学を重点勉強
 ・ 施工は自分の様子から高得点化は望めないと考え、10点ロスやむなしで臨む
 ・ 代わりに、法規はロスを極力減らし、他科目の予定外ロスのカバーを担う
 結果、重点勉強した力学で点数を稼ぎ、概ね目標設定どおりの結果で(実際施工は10点ロ ス)合格できました。
 もう1つ重要で意識しておきたいことが以下のことで、この意識を持ったうえで、一問一答 型(四択問題でなく)の過去問を反復学習すると、理解が進み、効率的な勉強ができるのでは ないかと思います。
 ・「 皆が正解している問題でロスしない」という意識
 ・「 この問いは何を問おうとしているのか」という「問題の意図」を意識


 5.設計製図試験の敗因克服と目標設定
 自分の設計製図試験の1年目は、時間も実力も不足しており、未完成での不合格でした。
 この結果から危機感が募るのですが、やみくもに時間だけかけて対策しても、息切れが十分 予想されたため、学科同様に目標設定をしてみました。
 ・ 設計製図試験の合格率が約40%なので、上位半分に入るくらいの実力をつける
 ・ 皆と同じ情報や知識を得たうえで、皆が同様に進める方法を踏襲する(特にエスキス)
 ・ 皆がきちんと計画し、作図と記述ができているものは同様にクリアする
 ・ これらに加えて、自信の持てる得意分野を1つ作っておく

 この中で、「皆と同じ」土俵に乗るには、予備校に通ってしまうのが手っ取り早く、体力や 脳みその限界点を考慮しても、ここは効率的によい意味でサボってしまい、敗因克服や得意分 野作りに費やせるように意識しました。
 自分の場合、計画や作図のスピード不足に対して、以下のことを意識し、ひたすら反復訓練 して体を慣らせました。結果、作図スピードは劇的な成長を遂げ、作図はなんとかなるかなと いう自信がつきました。
 ・ エスキスは、描く位置や内容をルーチン化して時間短縮(ダメ計画の減少、計画安定化が期待)
 ・ 作図は、定規使用を最小限化、ほぼフリーハンドで描き時間短縮
 ・ 柱、壁、窓、階段、EV、トイレ等は、ルーチン作業的に描けるようにして時間短縮
 ・ これらの作図対策を毎日30分、部活の基礎練習のように反復訓練
 また、計画では、計画対象の建物をいかに想像できるかが重要で、可能な限り課題用途の建物の現地見学をしておけるとよいです。 実際、自分の合格年度の課題用途「保育所、児童館・子育て支援施設」は、日常的に子供の送迎や親子教室等で出入りしていたため、 想像しやすかったのが勝敗を分けた一因かなと感じています。
 加えて、細かい話ですが、試験時間の6時間半使い続ける設計道具選びには、それなりにこだわりたいもので、自分の場合、以下のことを 意識して選択しました。
 ・ シャープペンは、疲労防止のため、軽くて芯の折れにくいものを選択
 ・ 消しゴムは、小範囲消去を容易にするため、ペン型を選択


 6.おわりに〜補足的に後押し等〜
 「立場が人を作る」とはよく言ったもので、資格を取得するとそれ相応に振る舞わなければという意識も働くのか、 自身の成長やビジネスにもプラスに働いているのではないかと感じています。
 合格に向けて努力したことは、きっと神様は見てくれています。資格取得後の自分を(ここは楽しく)想像しながら、がんばってください。 最後に精神的観点で補足を述べて終えたいと思います。
 ・ 適度なプレッシャーは集中力を生むため望ましいが、過度なプレッシャーは負担でしかないため、
  精神衛生には注意。
 ・ 前述の反復ですが、最後は気合いと根性です。あきらめない気持ちが重要。


  土木技術者としての第一歩

 〔取得した資格〕
  1級土木施工管理技士
 〔資格取得年度〕
  平成28年度


小松 直人(こまつ なおと)
 山形県 南陽市 建設課
 土木係 技師

 1.受験の動機・経緯
 監督職員として現場をいくつか担当してみると、主任技術者あるいは監理技術者の方のほとんどが 「1級土木施工管理技士」を有していることに気づかされます。発注者側の監督職員という立場でありながら自分は無資格であり、 資格を有する現場監督の方に指示することはどうしても負い目を感じるところではありました。
そのような理由もあり、これから先、施工管理に携わる技術者としていつかは取るべき資格と して意識するようになっていました。しかしながら、日常業務の多忙を理由に受験資格要件を 満たしながらも受験申込まで勢いがつかず、2年、3年と経過していたところでした。そんな 中、同期入庁の同僚が「1級土木施工管理技士」を受験するとの話を聞き、先に取られるわけに はいかないとの思いが芽生え、不純ながらそれが受験を決意する大きなきっかけとなりました。

 2.学科試験における留意点や学習のポイント
 学科試験は四肢択一式問題となっており、選択問題と必須問題に分かれています。全体の60%以上の得点が合格基準とされています。
 まず、最近の試験の傾向を知るために参考書を用意しました。ここ数年の出題形式や傾向はほとんど変化がないことから、あとは参考書を 信じて出題分野ひとつひとつを学習しました。
 必須問題についてはひととおり学習を進めましたが、選択問題の専門土木の分野に関しては経験のない工種の学習には時間を要することから
目を通すぐらいに留めて、日ごろ経験している工種については取りこぼしがないように重点的に学習しました。
 実地試験では語句の挿入問題が出題されることから重要と思われるキーワードはノートに書くことで語句の引き出しを 増やすことも心掛けました。
 試験当日はまったく経験のない工種でも問題文を読んでみると明らかに正解がわかるような一般常識的な問題がある 可能性がありますので、あきらめることなくすべての問題に目を通し、より自信のある解答を選択するよう心がけると 良いかと思います。

  3.実地試験における留意点や学習のポイント
 実地試験は経験記述論文と計10問から6問を選択する記述問題から構成されます。こちら も全体の60%以上の得点が合格基準とされています。
 経験記述論文は例年、施工管理に関するあるテーマについての「技術的課題、検討理由・検討内容、対応処置」を 問われるものとなっています。なんといってもこの経験記述論文の事前準備ができているかできていないかで試験当日 の出来は大きく変わるものと思います。私は1つの工事で複数のテーマにについて書けるよう過去担当した工事の打合せ記録等を 見返しながら工事を選定しました。自分が監督職員として経験したことでありながら、それを相手にわかりやすく具体的な文章にすることは想像以上に 難しく、自分の語彙力のなさに四苦八苦しながら解答案を作成したのを思い出します。過去の出題傾向から「工程管理、安全管理、品質(出来形) 管理、施工計画」については最低でも事前に解答案を準備しておくべきでしょう。当日の試験も時間に余裕を持って取り組むことがで きると思います。
 選択記述問題は語句あるいは箇条書きで解答する設問となっており、より正確に覚えておく必要があります。私は学科試験同様に実地試験 用の参考書を1冊購入し勉強しました。過去の傾向を見ると土工及びコンクリートの施工管理に関する問題が数多く出題されていることから その分野を重点的に学習しました。学科試験と重複する部分が多いので、学科試験の勉強を始める前に実地試験の問題傾向を掴んでおくこと でより効率的に学習ができると思います。

 4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等
 資格取得のためにしなければならない勉強はどの試験でも必要ですが、この資格に関しては日頃の建設行政で培われる経験や知識が試験問 題として出題されることが多く、大いに活かされることから比較的短い学習時間で資格取得を目指せると思います。これから技術者としてス キルアップしていくための足がかりとして1級土木施工管理技士を受験してみてはいかがでしょうか。
 今回は同僚と一緒に受験することを決めたことから、自分だけ落とすわけにはいかないといったモチベーションを最後まで保つことができ ました。同じ志をもった身近な人と一緒に受験することも確実な資格取得への近道になると思います。
 資格を取得したあとも相変わらず現場では現場監督の方々から助言をもらいながら解決策を模索する日々が続いていますが、「建設行政マ ンとしてより良いものを造りたい。」との思いで資格取得を目指し、取得できたことはこれからの技術者人生の自信に繋がっていくと感じて います。