■技術資格試験合格体験記 |
公務員技術者こそ総合技術監理部門を 〔取得した資格〕 技術士(総合技術監理部門) 〔資格取得年度〕 平成26年度 |
藤田 将輝(ふじた まさき) 札幌市 水道局 給水部 工事課 |
1.受験に至る経緯 私が技術士資格を取得しようと考えたのは、苫小牧市役所で同じく土木職員として働いてい た父の薦めがあったためです。「公務員は多様な関係者と折衝を行わなければならない。この 際、名刺に書く肩書きが何もないというのでは心許ない。資格の記載があれば相手の信頼を得 やすい」という父の言葉を聞き、なるほどと思ったことによります。 この助言を受け、平成24年度に33歳で上下水道部門の技術士資格を取得しました。その後、 一度口頭試験で不合格となったものの平成26年度は総合技術監理部門に、平成27年度は建 設部門に合格することができ、いまだヒラの立場ながら名刺に書くことのできる内容は増えて きました。 今回、平成25.26年度の2ヵ年に渡り取り組んだ総合技術監理部門の試験について、私な りの勉強方法(的なもの)を紹介させていただきます。 2.受験にあたっての準備作業 総合技術監理部門の受験にあたっては、バイブルとして「技術士制度における総合技術監理 部門の技術体系」(通称、青本)があります。まずこの第1章を繰り返し読んでいただくとわかりますが、 20ページ足らずのボリュームながら、総合技術監理部門とはなんぞやというエッセンスが濃縮されています。以降の受験申込、 筆記試験対策にあたっての必須作業ともいえます。また、あわせて技術士関連の有志HPを勉強しておくとなお良いです。 3.受験申込書の作成にあたって よくいわれることでありますが、技術士試験は受験申込書作成の段階から始まっています。 表面は機械的に作成できますが裏面の「業務経歴票」、「業務内容の詳細」(小論文)の記載に は熟考して臨む必要があります。口頭試験の際の最も重要な資料となるからです(筆記試験に ついても質問されることはありますが、可能性は低いかと思います)。 業務経歴票については、ともすれば単なる業務名の羅列になりがちな箇所ですが、ここで試 験官の方に「この受験者は総合技術監理のことをわかっている」と思わせることができれば、 その後の展開は明るいです。業務内容欄のスペースが許す限り、アピールポイントを記載す ることをお薦めします。総合技術監理のポイントのひとつは、トレードオフの解決(解消でき ることはまずないと思います)であることから、これを実践していることが伝わるような記載が 良いというのが私の感想です。 また、業務内容の詳細については、有志HPなどで方法論がある程度確立されており、大変参考になります。 私の実体験としても以下のような構成が作成しやすかったです。 @○管理と△管理がトレードオフとなった (できれば3種以上のトレードオフ) A その業務での最優先課題は○管理の□であった B △管理などの水準を「支障がない範囲」で下げて、最優先課題□の水準を守った すべての管理を最高レベルで実施した、という話だと単に与条件に恵まれていただけという ことになりかねないので注意してください。 4.筆記試験にあたって 択一試験対策としては、青本を繰り返し読んだほか、公開されている過去問を5年分ほど解 き、選択肢のすべてにつき、正しい記載内容がわかるように仕上げました。情報管理・社会環 境管理については青本の記載内容が古く、現状の技術に対応していないことから、インターネ ットなどで最新のキーワードを勉強しておくことが望ましいと感じました。ただ、青本と過去 問だけでも合格ラインである全体での6割正答の達成は可能でありました。 記述試験対策としてもやはり過去問を中心に据えました。最低でも3年分の過去問は経験し た上で本番に臨むべきであり、できれば実際の自分の経験業務を念頭において、1つの過去問 を複数パターンで解いておくことをお薦めします。 このほか、択一試験、記述試験ともに、有志HPが大変勉強になったのでぜひ参考にしてください。 5.口頭試験にあたって 詳細は割愛しますが、私は業務経歴票に書いた5つの経歴それぞれに5分、3分、1分バー ジョンのプレゼン用原稿を用意しました。また、Q&Aは多いに越したことはありませんが、私 の場合、業務経歴と小論文について50問程度、普段の業務で実践している管理の内容について 50問程度(各管理ごとに10問程度ずつ)、動機や技術士制度など一般的なものに対し50問程度、計150問程度作成しました。 6.おわりに 我々、公務員技術者は日常業務を通じて、工事・業務の受託者、地元住民など様々なステー クホルダー間の利害関係等を調整しており、実は普段から総合的な監理を求められ、あるいは 実践しています。また、今後、公共事業を取り巻く環境が厳しさを増していく中では、限られ たリソースを最適に配分する総合技術監理の観点を持って事業を進めていくことがより重要と なっていきます。このように考えると、公務員技術者こそ、積極的に総合技術監理部門の技術 士資格を取得し、自らの業務へと反映していくべき!といえるのではないでしょうか。 追記 青本は平成29年2月23日を以て技術士会による頒布が終了してしまいました。 所有者に借りることをお薦めしますが、どうしても手に入らない場合は、有志HPを熟読するだけ でも、合格に十分な知識を得られることを申し添えます。 |
信頼される技術者を目指して 〔取得した資格〕 技術士(建設部門) 〔資格取得年度〕 平成27年度 |
滝谷 是央(たきや これお) 札幌市 まちづくり政策局 総合交通計画部 新幹線推進室 新幹線推進担当課 |
1.受験の動機・経緯 私が技術士という資格に興味を持ったきっかけは、前職の建設コンサルタントに勤務当時、 尊敬する先輩や上司が高度で専門的な応用力を活かし、業務に取り組んでいたことです。技術 士に対して憧れと自分もいつかは挑戦してみたいと思っていました。 札幌市に転職後も周りに多くの技術士がいたことに加え、@公務員になっても技術のプロフ ェッショナルでいたかったこと、A技術者としての幅を広げるため役所内の他分野の技術士と 交流したい、との思いが受験の動機です。 2.筆記試験における傾向と対策 日本技術者教育認定機構(JABEE)認定課程修了者以外の方は、漏れなく一次試験(基礎 科目・専門科目・適正科目)を受験する必要があります。私は大学院修了の1年後に一次試験 を受験したため、一般的な工学の基礎知識がまだ記憶に残っており、幸い1年目で合格できま した。建設部門における一次試験は、出題分野が広範囲に及ぶため土木に係る知識をはじめ、 基礎科目においては数学・物理・化学・材料など、在学期間から離れるほど記憶が薄れ、勉強 に費やす時間が多くなる傾向があると思います。仕事をしながらではモチベーションの維持など に難しさを感じる場合は、セミナーや講座等に足を運んでみると違った刺激を受けることが出 来るかもしれません。 一次試験に合格した後は、難関の二次(筆記)試験が待っています。二次試験は、@専門知識 A専門知識及び応用能力B課題解決能力の3項目について問われます。私は鋼構造及びコンク リートの鋼構造で受験しましたが、一口に鋼構造といっても範囲が広いため、主として防食、 座屈、疲労、溶接、高性能鋼、既設鋼構造物の補修補強工法の6分野に的を絞って勉強しまし た。専門知識については、鋼構造に関する基礎を復習しながら新技術・新工法等を調べました。 専門知識及び応用能力・課題解決能力については、上述した6分野について過去問題集を参考 にし、それぞれ6パターン程度の模擬回答を作成したあと、記憶として定着するまでひたすら 読み込むことを繰り返しました。この方法を用いれば、6×6=36程度の模擬回答を用意で きるため、試験本番での対応の幅が広がります。また、さらに記憶に定着させる方法として、作 成した模擬回答をボイスレコーダーに録音し、通勤中等の時間を利用しリスニングすることも 効果的だと思われます。 筆記試験本番でその成果を確実にアウトプットが出来なければ今までの苦労が水の泡となり ます。私が筆記試験の際に特に注意したことは、“記述する前に骨子等を用いて全体構成を練る” こと、“文章は長くても3行程度にまとめる”ということです。この理由は、試験本番という緊 張の中で漏れや重複なく回答する必要があることと、接続詞を多用した長文では採点官が文意 の把握に苦慮しかねないからです。私は採点官が1日に何十もの論文を読むことを踏まえ、読 み易い文章構成と一文一意を心掛けました。 3.口頭試験における傾向と対策 口頭試験の時間は20分と短いので、限られた時間で試験管が求める回答をしなければなり ません。緊張して取り繕おうと必死になるあまり、余計なことまで発言することは基本的に NGです。質問される範囲は、筆記試験の課題解決能力等からも出題されるようですが、大部 分は受験申込書の業務経歴票から質問されます。従って、受験申込書に記載する段階で、試験官 からの質問を想定し、経歴票を作成することが重要です。 口頭試験の具体的な対策としては、技術士の上司や先輩に模擬面接を実施してもらうことが 効果的です。さらに模擬面接の受け答えを録音し、客観的に自分の回答内容を聞くことで弱点 の把握にもつながります。口頭試験は大別して業務経験票に記載された事項が本人の体験によ るものなのか?技術士に相応しい人物なのか?という二点について最終判断されるものです。 技術士ならどう回答するべきなのかという基本に立ち戻り、質問に対する回答を作成すること が重要です。質問の中にはどうしても明確に回答することが出来ないものもあるので、その時 は不安な顔や動揺した態度を見せないように心掛けてみてください。 4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等 私は平成21年度に筆記試験をパスし口頭試 験に臨みましたが、心のどこかに技術士なんて以外と簡単に合格できそうだな、という奢りや 慢心・勘違いがあったため、口頭試験対策に緩みがあり、結果として不合格となりました。そ の後は5回連続で筆記試験すら受からないという冬の時代があり、何度も諦めそうになりまし た。これを読んでいる皆さんのなかにも挫けそうになっている方もいるかと思います。そんな 時は技術士を取得している未来の自分を想像してみてください。如何でしょうか?技術士を取 得した自分は、仕事に対する取組み姿勢や自信周囲からの信頼等、あらゆる面で今とは明らか に異なるはずです。苦しい時もありますが、技術士取得後の明るい未来を信じ、決して諦めず 頑張ってください。 |
技術士への挑戦 〔取得した資格〕 技術士(建設部門:河川、砂防及び海岸・海洋) 〔資格取得年度〕 平成25年度 |
奥原 常志(おくはら つねゆき) 岐阜県 古川土木事務所 河川砂防課 技術主査 |
1.受験の動機・経緯 私の動機は単純で、周りの同世代が技術士や一級土木施工管理技士などの資格を取ったとい う話を耳にするようになり、その羨望から自分も資格を取りたいと思ったのがそもそものきっ かけです。 では、どういった勉強を行えばいいかとネットなどで調べると、論文作成・添削といった自 分にとってはハードルが高い内容で思ったはいいが勉強になかなか取りかかれませんでした。 そこで、ストレスにならない方法で、自分なりにやってみようと試験勉強をスタートさせました。 2.出願時の留意点や注意点 技術士(二次試験)の受験申込書には、業務経歴に関して業務内容の詳細を720字以内で記載しなければなりません。 口頭試験では、この業務実績から試験官に質問を受けることになりますので、口頭試験を想定して記載できるかが ポイントとなります。 しかし、たった720字で業務の課題から自分の判断、成果までの一連を記載するのは、かなり大変です。 私は簡潔に書こうとするあまり技術的内容が希薄になり、口頭試験の際は苦労しました。 「この業務内容のどこに技術力が求められるの?」と問われないように、もしくは、問われる内容まで 想定して記述をしなければならないと感じました。 3.筆記試験の留意点・学習のポイント @一次試験 二次試験を受けるには、まず一次試験を突破する必要があります。 一次試験の試験科目は、基礎科目、適性科目、専門科目の3つがあり、それぞれの科目 で50%以上の点数が合格ラインとなります。 一次試験の出題傾向としては、過去問と似た内容が多いので過去5年分くらいの過去問 は必ずチェックしておくことが重要です。専門科目は、過去問に加えて参考書を一冊購入 し勉強することで確実に合格できると思います。 ただ、結構苦労するのが「基礎科目」です。内容が多岐に渡るため、よく理解できない問 題が多く出題されます。ここのポイントとしては、理解できない分野は思いきって勉強しないことも 一案だと思います。1つの分野で6問中3問を選択して回答する方式(×5分野)のため、 確実に半分正解できるように自分の理解できる分野だけを重点的に勉強することが合格への近道だと感じました。 A二次試験 筆記試験の傾向は、過去問や国土交通白書を確認すると自ずと見えてきます。そして参考書に傾向と対策が しっかりと明記されていますので、まずは参考書選びが第一段階だと思います。 また筆記試験のポイントは、何より読みやすい文章を書くことに尽きると思います。段落分けされ、余白が適度にあり、起承転結の 体をなしている文章が書けるよう最初に文章の構成や組み立て手法をしっかりと勉強することが先決です。 私が論文を書く際に実践した方法は、問題用紙等の余白に関連するキーワードや内容を思いつくだけ書き出すことです。 それらを矢印でつなげて文章を組み立てることで、起承転結の文章が作りやすくなりますし、書き出しているうちに別のキーワードが思いついた り、内容を思い出し、自ずと書く分量も増えてきます。この文章の組み立てに最初の40.50分間を費やすことで、読みやすい文章に近づいていくと感じます。 4.口頭試験の留意点 口頭試験対策としては、私は想定問答をとにかく作って、妻を相手に模擬面接を繰り返しました。想定問答は、業務内容の詳細に関わるも のだけではなく、業務経歴一覧に記載したそれぞれの業務について、その課題と成果を答えられるように準備しました。実際、口答試験時には、 今回の受験科目と関係の薄い道路建設業務経歴について、その課題と成果を問われましたが、うまく答えることができたと思います。 私の反省点は、意図が分からない質問に対して、頑張って答えようとして時間を要してしまったことです。口頭試験の持ち時間20分に対して、私 は25分ほど要したと思います。帰ってから技術士に関する掲示板を見ると、試験時間は20分弱だったという記載が多かったので試験官が望む 回答ができなかったのではと焦りました。 自信のない回答は、何とか補おうとついしゃべり過ぎてしまいますが、どれだけ時間を要しても間違いは間違いであり、それだけ時間の無 駄となります。20分の間に合格ラインに達しなければならないので、分からない質問には分からないことを伝えて、次の質問にうつること が必要と感じました。 5.受験者へのアドバイス、励まし等 私が思う二次試験合格のポイントは、試験をまず受けてみることだと思います。もちろん受けたところで、合格ラインにはほど遠いですが、 試験場の雰囲気を感じたり、分からないなりに解答用紙をなんとか埋めてみると達成感を感じます。技術士試験は、普段文章を書くことが多 い公務員向きではないかと個人的には思います。何と言っても、これを皮切りに来年度も挑戦してみようという気になっていくのです。 次に、自分にあった勉強方法を見つけることがポイントと感じます。私は覚えることより忘れないことを念頭に、ながら勉強に徹しました。 キーワードやポイントをまとめて携帯電話に送信し、電車の中や買物の合間など、ちょっと空いた時間に見るように心がけました。これなら ばストレスになりませんし、少しずつではありますが知識が蓄積していきます。たとえ1回目で受からなくても次も受けてみようと思います し、2回、3回と受けることで合格する確率が高くなると思います。私はこの方法で3回目に合格しました。自分の文章の力量が分からない まま試験を受け続けるという状態でしたが、受けるたびに判定は上がっていき、合格に近づいている実感がわきました。有資格者に文章添削、 助言等を行っていただくことが合格への近道だと思いますが、私のような方法もあるということを参考にしていただければ幸いです。 |
一級建築士資格取得を目指して 〔取得した資格〕 一級建築士 〔資格取得年度〕 平成27年度 |
菅谷 真典(すがや まさのり) 福島県 相双建設事務所 建築住宅部 建築住宅課 主任建築技師 |
1.受験の動機・経緯 私は、大学から建築を学び始め大学院まで進学しましたが、建築士の資格は漠然と必要だと 思っていました。ただ、実際に資格取得の必要性を強く感じたのは、福島県に入庁し社会人と して建築に携わるようになってからです。日々の業務では、県民の方々からの建築に関わる一 般的な相談の他、施工業者や設計事務所等の建築業界の方々から専門的な施工協議等も数多く、 それらの中で説明責任が求められます。責任を果たし信頼される技術職員であるためには、一 級建築士の資格取得が必要だと実感したのが受験の動機です。 2.学科試験における傾向と対策 最近の学科試験の傾向は、過去問題の類似出題より法改正や新技術等の新規問題が増加して おり、試験の合否を分けるポイントにもなっています。 それらの対策としては、とにかく勉強することです。と言ってしまえば身も蓋もないですが、 試験開始の合図があるまで、どれだけ自分を追い込めるかが勝負です。 具体的には、第一に「自覚すること」です。「今 年は必ず一級建築士試験に合格する」という強い意気込みを周囲に公言することで、資格取得 へ向けて自分を奮い立たせると同時に周囲の温かい応援を自分の力にして、より一層勉強に取 り組むことができます。 第二に「時間の管理」です。試験日までの残された時間を強く意識することや、現在の一日 の時間割等を作成しスケジュールを把握することで、限られた勉強時間がどこにあるかを確認 することができます。 第三に「場の確保」です。独学にしても資格学校に通学するにしても、様々な誘惑にも負け ず、勉強に取り組めるスペースを作ることです。この三点は精神的な部分が大きなウェイトを占 めていますが、シンプルなこれらの事が学科試験合格への第一歩だと思います。 あとは継続的な勉強を実行するのみです。人それぞれのペースがあると思いますが、やりき る気力・体力を持って自分で作った貴重な時間を効率よく勉強に費やす必要があります。基礎 学力の習得及び定着には過去問題の反復学習は必須です。ただし、暗記は知識として身につか ず、いつか忘れてしまうので、最初は時間が掛かっても、問題の内容及び回答の正誤を理解す る勉強が必要です。そうすることで、初見の問題にも臨機応変に対応できる学力が身につくの ではないかと思います。また、新傾向問題への対策としては、最近の建築業界の情報に常に耳 を傾けて、積極的に知識を吸収することが重要です。 学科試験は科目別及び総合計の合格基準点が あります。試験で満点を取れれば理想的ですが、科目により得意・不得意があるかと思います。 満遍なく得点していくためには、基本的な問題を取りこぼさないよう反復学習による基礎学力 の定着の他、法令集が持ち込み可能な「法規」は普段から法令集を引く訓練をして確実に得点 する等、不得意科目をカバーできる実力を身につけることと全体的に不得意な部分を少なくす ることが重要です。 3.設計製図試験の対策 設計製図試験は、6時間30分という非常に短い時間で「計画の要点記述」及び「作図」を 仕上げなければなりません。また、学科試験日からわずか3ヵ月の短期間で合格するための実 力を身につける必要があり、並大抵の努力では不可能です。 対策として、まずは貪欲に手を動かすことです。最初は何時間掛かってでも描ききることを 意識し、ひたすら手を動かすことで図面を描く力を身につけます。描いた図面の枚数は、実力 アップに必ず比例します。 次に、課題を読み解き表現する力をつけることです。提示された条件を見落として間違った 解釈をしてしまうと、大きな減点につながるばかりか一発で不合格の状況に陥ります。また、 自分の考えをエスキスでまとめられないと、図面を仕上げることはできません。その他、強弱 のある線や読みやすい文字を意識して、メリハリのある図面を描くことも大切です。図面が見 づらいものでは、試験で要求された条件を理解して表現したという自分の考えは伝わりません。 図面を描く力のみならず建築全般を理解する力や考えを表現する力が求められます。そのため には、これらを意識して過去の本試験問題や問題集等に数多く取り組むことが重要です。 最後に、時間配分を意識することです。どんなに良い図面でも、時間内に仕上げられなけれ ば採点の土俵にあがりません。課題の読み込みから作図まで、常に時間を計測しながら作図す る練習に数多く取り組むことが必要です。 自分で納得いくまで描ききったと思えるまで手を動かせば、自ずと結果がついてくると思います。 4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等 長い試験勉強を乗り切って合格するためには、「一級建築士になりたい」という目標を強く持 つことや周囲の温かい応援があって資格取得に取り組むことができていることを認識すること が大切です。ただし、根を詰めると長続きせず途中リタイヤをしてしまう恐れがありますので、 仕事も勉強もプライベートもメリハリをつけて最後まで諦めず、資格取得に向けて頑張ってい ただければと思います。 |
技術者として自信を持つために 〔取得した資格〕 1級土木施工管理技士 〔資格取得年度〕 平成27年度 |
齋藤 大治(さいとう だいち) 新潟市 土木部 西部地域土木事務所 建設課 道路整備班 副主査 |
1.受験の動機・経緯 私が1級土木施工管理技士の資格取得に挑戦しようと思ったのは、働き始めて5年目のこと でした。それまでは、先輩方からのご指導をいただきながら業務をこなすことに精一杯で、資 格取得の勉強をしようなどと、考える余裕もありませんでした。ところが、年数を重ねるにつ れ、複雑な工事を担当する機会も多くなり、これまでのような取組み方でいいのだろうか、と いう危機感を覚えるようになりました。 そんな中、橋梁工事の担当となったことで、これを機会に技術者としての自信をつけたいと 考え、監理技術者要件の一つである1級土木施工管理技士への挑戦を決意、本格的に資格取得 に向けた勉強を始めました。 2.学科試験における留意点や学習のポイント 学科試験は土木に関する一般知識について四肢択一形式で問われます。 平成27年度の学科試験は問題Aと問題Bから構成され、問題Aは61題中30問を選択して回答、 問題Bは全問必答という形式で行われました。 学科試験の対策として、まずは過去問集に取り組みました。試験は非常に広範囲から出題さ れるため、過去の出題傾向から学習するポイントを絞ることが狙いでした。 結果的には過去5年分の過去問集に計3回取り組みました。 まず1回目は普通に取り組み、間違った問題にチェックを付けていきました。2回目は、前 回はなぜ間違えたのかを意識して取り組むよう心がけました。そして2回とも間違えた問題に ついては、それらが各仕様書などでどのように記載されているのかを調べ、それぞれの要点を 自分の文章でノートにまとめていきました。またインターネットで実際の写真を検索するなど して、イメージを掴むことにも努めました。 それから3回目の過去問に取り組みました。3回目ともなると、大抵の問題が記憶の片隅に 残っていたため、ほとんどを正解することができたように思います。それでも間違えた問題は、 同じようにノートにまとめていきました。この自分の苦手分野がまとまったノートは、試験直 前の見直しにも大いに役立ちました。 私は問題Aの過去問に取り組む際、これまで経験のなかった鉄道や港湾といった分野の問題 にも取り組みました。未経験の分野というと敬遠してしまいがちですが、過去問によく似た問 題が本番で出題される可能性も大いにあると思われますので、過去問では全ての問題に目を通 しておくことをお勧めします。 3.実地試験における留意点や学習のポイント 実地試験は記述問題と経験記述論文から構成されます。 記述問題は学科試験で問われた知識を、文章で記述できることが求められます。そのため記 述問題の対策では、学科試験の際にまとめたノートが大いに役立ちました。記述式の場合は、 専門用語や工法などを正確に記述する必要があるため、記述問題の過去問に取り組みつつ、併せて ノートの見直しと拡充に努めました。 今思えば、学科試験と実地試験を別物と考えず、初めから実地試験を意識した学科試験対策 が行えれば、非常に効率的であっただろうと感じています。 経験記述論文は各年のテーマに沿って、過去実際に直面した事例に関し、受験者がどのよう に対処したかを問われます。この経験記述論文は、必ず事前に作成しておくことをお勧めしま す。私は6つのテーマ(品質・出来形・工程・安全・環境・施工計画)についての論文を予め 作成しました。 論文の作成にあたり、まず初めに題材となる工事を決める必要があります。一つの工事につ いて複数のテーマに関する論文を用意できれば暗記する際の量を減らせるので、そういった視 点から題材となる工事を選定することをお勧めします。また一つの工事について複数の論文を 作成すると、例えば品質の視点で作成していた時には気付かなかったことについて、工程の視 点で作成すると気付けることもあり、またそれを品質の視点の論文にも生かせるという好循環 も生まれます。 6通りの論文を作成した後、周りの資格所持者や先輩方に添削をお願いしました。私の場合 は自信作たちが真っ赤になって返ってきましたが、この修正作業を繰り返したことで、より良 い論文を準備できたと思います。 私は8月下旬から論文の作成に取り掛かり、結果として、実地試験の直前である9月下旬ま で推敲を繰り返していました。前段の学科試験は7月上旬に試験、8月中旬に合格発表が行わ れますが、実地試験対策を十分行うためにも、学科試験の合格発表を待たずに対策を始めるべ きであったと思います。 4.受験者へのアドバイス、注意点、励まし等 1級土木施工管理技士の受験申し込みは4月、学科試験は例年7月上旬に実施されています。 可能であれば4月より前から勉強を始めた方が良いですが、私が本格的に勉強を始めたのは、 申し込み後の4月中旬からでした。同じように短い準備期間になってしまう方も多いと思いま す。私の場合、平日にまとまった勉強時間の確保が難しかったため、平日は昼休みなどのちょ っとした空き時間を勉強に当てていました。時間があるときに勉強するだけでなく、時間を作 って勉強するということが、仕事と資格取得の両立において大切だと思います。 これまでは諸先輩方からご指導いただくばかりで、自分で専門書を開いて一から学習すると いうことが少なかったため、本資格の受験勉強は専門知識についての理解が深まる非常に良い 機会となりました。 1級土木施工管理技士への挑戦は、土木技術者への入門、またはこれまで培った知識や経験 の整理と再認識にとてもいい機会であると思います。この文章が、今後この資格を目指される 方々の参考に少しでもなれれば幸いです。 |