■第5回 21世紀の「人と建設技術」賞

選考を終えて 懇談会の意見等 受賞一覧


■第5回21世紀「人と建設技術」賞の選考を終えて   (本賞審査委員長 佐藤 信秋)
 21世紀の「人と建設技術」賞は、時代の要請に対応し、優れた建設技術を現地 に積極的に導入した事業や、現地において既存の建設技術や事業手法に創意工夫を 行った事業など、建設技術の利・活用に顕著な成績を挙げた事業を選考し、その実 施した機関を表彰するものであります。本賞は、平成8年度に設置され、今回で5 回目を迎えました。
 今回の応募からは、導入された建設技術の効果が確認された事業も応募対象の事 業とすることとし、事業完了時期を過去3年間(平成 9年度から平成11年度まで) に拡大しました。
 今回は、全国の事業主体40機関から62事業の応募があり、本賞審査委員会、 幹事会で慎重に審査し、21事業を選定しました。審査にあたって、今回も7名の 有識者からなる21世紀の「人と建設技術」賞懇談会を開催し、ご意見をお伺いし ました。
 さて、今回の受賞事業は、特に利用者に説明をしつつ環境保全・再生に取り組ん だ事業、事業の計画段階等における地域住民の参画があった事業、高齢者・障害者 対策に取り組まれた事業、コスト縮減に積極的に取り組まれた事業、情報技術(IT) を活用した事業等が高い評価を得ました。また、これらの事業は事業完了後の効果 の検証に取り組まれています。
 また、懇談会では、建設事業の福祉・環境への配慮や住民参画など「人とのかか わり」のある事業が多く応募されたことに評価がなされました。この取り組みを今 後さらに展開していくためには、事業や導入技術の定量的な評価、住民参画の内容 、事業完了後の効果の計測・評価、自然エネルギーの利用による地球環境への負担 軽減を図った事業について、さらに真剣に取り組むぺきであるとのご意見もいただ きました。
 今日、公共事業の着実な進展と円滑な実施を図るためには、計画段階から施工、 管理に至るまで、一層の効率的、効果的な執行や透明性の確保が求められており、 そのため建設技術の発展や事業の創意工夫は不可欠であります。
 会員各位には、今後の公共事業の推進にあたり、本賞の「人とのかかわり」の趣 旨を踏まえ、より一層の工夫を図るとともに建設技術の展開に積極的に取り組まれ るよう期待します。




■第5回21世紀「人と建設技術」賞懇談会委員からの意見、助言等
 【委  員】(敬称略 五十音順)
   岩 田 照 丈  (株)社会開発研究所 常務理事
   大 熊 由紀子  ジャーナリスト 朝日新聞社論説委員
   川 口 順 子  サントリー(株) 常務取締役
   篠 原 弘 道  NTTアクセス網研究所 部長
   増 井 光 子  横浜動物園ズーラシア園長
   松 野 信 也  日本政策投資銀行 理事
   渡 部 一 二  多摩美術大学美術学部建築学科教授      (総数 7名)

 【要  約】



   ○全体的評価について
  • 応募事業の内容にはバイアフリーや環境に関するものが多くなってい る。今後、どのように広めていくかを定量化したほうが良い。
  • 評価の軸を考えていくべきではないか。例えば、新規性、他の地域で の汎用性、コストパフォーマンス、バリアフリーなど。
  • 事業の完了後、5年程度経てから、利用者の評価の高いものを応募対 象とすべきではないか。
  • 事業完了後の地域住民の反応が必要である。

  ○リサイクル、コスト縮減について
  • 建築物を新築するにさいに、自然エネルギーを利用してどの程度のコ スト低減が図られたのか計量的に説明があると良い。
  • 地域で得られるエネルギー源としての風力発電を利用することにより 、どのくらいの経済効果があったのか。

  ○環境について
  • 就労環境の改善を図った事例について、今後、他の地域でも展開して ほしい。
  • 砂防ダムにある魚道について、魚類の遡上が確保できるか。また、魚 が休憩する場所はあるのか。
  • 大気圧載荷工法を水中に適用したユニークな事業である。この工法が 自然環境に配慮していることをアピールした方が良い。適用の限界可能性 についても検討してほしい。
  • 自然エネルギーの利用など環境の配慮に対する項目を並べているが、 今後の展開について少し疑問がある。
  • 下水道の普及について、環境への意識を高めるうえで、どこまで地域 住民に理解してもらえるかが重要である。

  ○福祉について
  • 住民参加やバリアフリーという言葉が様々なところで使われているが 、言葉だけに終わらないようにしてもらいたい。
  • 障害者や高齢者が、まちづくりにどの程度かかわったのか説明してほ しい。
  • 高齢化や障害者に事業の計画段階から参画してもらい、また、利用し てもらいながらバリアフリーを考えたことが良い。

  ○その他
  • 温泉があるとか、風が強いという地域の特徴を生かしている事業は、 今後、同様の地域での展開がしやすくなると思う。
  • 道路情報の仕方は、これまでの公共機関の情報提供において不足した 考えである。さらに発展させてほしい。
  • 住民自らの協議会は、少ないケースではないだろうか。
  • 消化ガスの有効利用は、ユニークの事業である。
  • 事業の計画段階において、子供たちのアイデアを取り入れていること は理解できる。
  • 下水道集団整備事業は先進的な方法であり、今後、他地域でも取り入 れられる方法ではないか。



PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Acrobat Readerが必要です。
「Get Acrobat Reader」のボタンでダウンロードして下さい。
ボタン


■第5回21世紀「人と建設技術」賞 受賞一覧 21事業
※事業概要をPDF形式でダウンロードできます。事業名をクリックして下さい。
事 業 の 名 称 (分野)
受 賞 機 関
協 会 名
臼尻漁港修築事業
(ドーム型の護岸を採用し、厳寒、降雪、強風、波しぶきなど積雪寒冷地における厳しい自然条件を克服し、安全で快適な就労環境空間を創出するとともに、 ドーム上部には展望施設や釣り施設を付加して海とのふれあいにも配慮した事業)
北海道開発局
  函館開発建設部
    函館港湾建設事務所
水産庁協会
八幡平山系直轄砂防事業(葛根田川第1砂防ダム)
(「緩勾配の砂防施設」を望む地域住民の声を計画段階から積極的に取り入れ、それを実現する手段として、ダムの基礎掘削時に発生する砂礫を堤体材料 として有効活用する新技術「CSG+石張」工法の開発・導入により、省資源、省エネ、省力化、ゼロエミッション、コスト縮減、工程短縮、施工性向上、 修景及び渓流バリアフリーを実現し、情報公開を積極的に行った事業)
建設省東北地方建設局
    岩手工事事務所
東北地建協会
自然エネルギー活用型道路融雪施設整備事業
(風の強い地域へ「風力発電によるロードヒーティング」を導入し、地球環境への配慮を行った事業)
建設省東北地方建設局
   郡山国道工事事務所
東北地建協会
青森第2地方合同庁舎機械設備(空調)工事
青森法務総合庁舎機械設備(空調)工事
(青森第2地方合同庁舎及び青森法務総合庁舎の新営に伴い、新しい空調方式である「エアバリア方式」の導入を行った事業)
建設省東北地方建設局
     営繕部設備課
東北地建協会
台温泉地区県単凍雪害対策事業
(道路融雪工事に温泉旅館から放流される排湯を使うことにより、環境にやさしく未利用エネルギーの有効利用を図り、大幅な維持管理コスト の低減を図った事業)
岩手県花巻地方振興局土木部
岩手県協会
岩手県道路情報提供サービス事業
(広大で、多くの峠部を抱え、積雪寒冷地である県土の道路交通の安全確保を図るため、峠部に路面監視カメラを設置するとともに、これらの 映像情報等をインターネット上に「道路情報」として提供した事業)
岩手県土木部道路維持課
岩手県協会
福島空港2500m拡張事業
(建設リサイクルの推進と新工法の採用によりコスト縮減を図った事業)
福島県土木部
福島県空港建設事務所
福島県協会
重要港湾常陸那珂港北防波堤建設事業
(港湾整備におけるケーソン製作に、型枠自動上昇工法を用いて作業の省力化、効率化を図り、安全性を確保した事業)

運輸省第二港湾建設局
  鹿島港湾工事事務所

二港建協会
一級河川飯沼川河床整正(浚渫)工事
(浚渫残土を発生することなく、浚渫と同等の効果が得られる自然環境にもやさしい技術の開発)

茨城県境土木事務所

茨城県協会
埼玉県環境科学国際センター新築工事
(環境配慮の考え方を広く取り入れた建物づくりを行うとともに、自然生態系を再現した公園等との整合性を図った周辺整備の実施)

埼玉県住宅都市部営繕課
埼玉県住宅都市部設備課

埼玉県協会
一級河川空堀川整備事業
(河川の低水路整備等に住民との新たな合意形成手法を導入し、成功した事業)
東京都北多摩北部建設事務所
東京都協会
小台大通り商店街における防災まちづくり
(行政(東京都、荒川区)と地域住民が協同してつくりあげた防災まちづくり事業)
東京都第六建設事務所
荒川区都市整備部
東京都協会
掘切二丁目公園(防災活動拠点)整備事業
(こちら葛飾掘切二丁目公園「自分達のまちは、自分達で守る」)
葛飾区建設部
東京都協会
高速道路から発生する可燃ゴミの固形燃料化
(地球環境にやさしいゴミリサイクルへの取り組み)
日本道路公団東京第三管理局
       高崎管理事務所
日本道路公団協会
川崎縦貫線 換気洞道工事
(都市内非開削トンネル工法・MMST(Multi−Micro Shield Tun-neling)工法の開発)
首都高速道路公団湾岸線建設局
首都高速道路公団協会
千葉ニュータウン「いには野」のまちづくり
(「健康と安心のまち」を謳い、地区全体のバリアフリー化を中心とした「人にやさしいまちづくり」事業)
都市基盤整備公団千葉地域支社
  千葉ニュータウン事業本部
都市基盤整備公団協会
長岡市消化ガス有効利用事業
(下水汚泥から都市ガスを甦えさせる事業)
長岡市土木部下水道管理課
長岡市土木部下水道建設課
長岡市協会
遊水消波機能を持つ階段護岸の設計・施工
(新開発の消波ブロックによる低天端護岸の実現と同時に、訪れる人全てが瀬戸内海情緒を楽しめるようバリアフリーの水辺公園として整備した事業)
運輸省第三港湾建設局
  高松港湾空港工事事務所
運輸省第三港湾建設局
    神戸調査設計事務所
三港建協会
レークピア大津・仰木の里「ゆめこうえん」整備事業
(小学生とともに創った新しいまちの21世紀のそるさと公園づくり)

都市基盤整備公団関西支社
  滋賀開発事務所仰木開発課
都市基盤整備公団協会
重要港湾平良港港湾整備事業平良港(トゥリバー地区)防波堤(北)上部工事
(景観を考慮し、隣接するマリーナゾーンと一体となった親水空間を創造し、観光客や地域住民が気軽に利用できる憩いの場とするために防波堤の上部工の高質化を図った事業)
沖縄総合事務局
   平良港湾工事事務所
沖縄総合事務局協会
大分県(国東半島)下水道集団整備事業
(近接する市町村が下水道施設の共通化、共同化を図り経済的かつ効率的に実施する下水道事業)
日本下水道事業団
     北九州総合事務所
大分県
日本下水道事業団協会


BACK