■技術資格試験合格体験記

  メンテナンス時代へ
施設管理者としての技術研鑽


 〔取得した資格〕
  コンクリート診断士
 〔資格取得年度〕
  平成29年度


沢西 芳円(さわにし よしのぶ)
 三重県四日市建設事務所
 プロジェクト推進室
  1.受験の経緯、動機
 私は三重県庁に入庁して今年で23年目の土木技師です。若輩の頃、日々の業務を通じて発注者としての技術力向上の必要性を痛感し、 せめて受注者に求める資格ぐらいは取得しておこうと29歳の時に一級土木施工管理技士の資格を取得したのが技術資格取得の第一歩でした。 それ以降、年齢に応じて技術士(建設部門)、同(総合技術監理部門)と段階的にスキルアップを図り、これらの資格取得の過程で得た知識 や物事の考え方は、日常業務において直接的にも間接的にも大いに役立っているところです。
 こうした経緯のなか、私が次のステップとして意識したのがコンクリート診断士でした。その背景には高度経済成長期以来、ストックされ てきた膨大な社会資本の老朽化の急速な進展があります。2012年12月に発生した笹子トンネルの天井板落下事故を契機として、維持管理に 関する新たな行政施策の展開、指針類の整備や関連する技術開発の推進が図られているなか、施設管理者である行政職員として、メンテナン ス時代に対応した技術を身に付けておくことは、県民の信頼を得るためにも重要であると考えました。

 2.受験の留意点や取組み
 @受験へのアプローチ
 コンクリート診断士はコンクリート構造物の診断における計画、調査・測定、劣化予測、評価、判定及び補修・補強対策ならびにそれら管理、 指導等に関する業務に携る技術者と位置付けられており、広範囲に亘る専門知識とその応用力が要求されます。そこで、まず基礎知識の充足を 図ることから始めました。過去にコンクリート技士の資格は取得していたのでさらなる専門知識の習得のため、その上位資格であるコンクリート主任技士の 資格を取得し、その勢いに乗じて、翌年にコンクリート診断士を受験しました。今思えば、このステップが一発合格に繋がったと考えます。
 コンクリート診断士の受験には、4月に2日間開催される技術講習受講が必須です。この技術講習は平日のため休暇を取得しなければならず、 費用も高額です。内容も受験対策とは無縁で難解な専門書の講義を延々受けることになります。しかも受講有効期限は2年間で2年以内に試験に 合格しないと再受講となります。
 試験は例年7月の第3週末の日曜日であり合格発表は9月下旬と、技術士試験などと比較して短期集中的に対策が立て易い資格試験である と感じました。
 A試験内容及び対策
 試験は午後から3時間30分の中で、40問の択一問題と2問の記述問題(各1,000字)を解くことになります。 合格率は近年14.15%程度で推移しています。合格基準は非公表ですが、毎年合格率がほぼ一定のため上位15%以内に入る必要があります。
 択一と記述では記述の方が、配点ウエイトが高いと言われていますが、択一には足切りがあります。記述の出来が良くても択一の得点が一 定以下(7割程度?)なら記述を読んでもらえませんので択一を軽視できません。
 択一は、毎年類似問題が出題される訳ではないため、過去問中心の勉強法では7割以上の得点は難しいと感じました。そこで関連知識を きちんと理解するために専門書やインターネット等で知識を補完しました。また毎年決まって計算問題が出題されますので 試験当日に電卓を忘れると悲惨です。
 記述は、A:診断士としての資質を問う問題とB:診断士としての実務能力を問う問題の2問が出題されます。A問題は過去問中心に時事問題を 押さえておくことで対応できます。B問題は建築と土木から選択しますが、専門外である建築は最初から捨て、土木のみを準備しました。 留意点は問題を熟読し、文章の起承転結を意識して要求事項を漏れなく必要なキーワードとともに盛り込んで記載することが肝要です。 対策としては過去問の解答例を参考に、自分なりに想定問題を用意して備えました。
 試験当日の留意点としては、限られた試験時間内に40問の択一問題と2,000字の記述式問題を解くために、効率的な解答の時間配分が最も 重要となります。

 3.資格取得後に実務に役立たせるために
 コンクリート診断士は民間資格ではあるものの、国土交通省の『公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格』に おいて橋梁(コンクリート橋・鋼橋)等の点検・診断業務を行う担当技術者に登録されているなどメンテナンス時代において注目されている資格 です。また、コンクリート構造物は道路、橋梁、港湾、河川砂防など全ての分野においてストックされており、そのメンテナンスは分野共通の 課題と言えます。
 現在の私の部署では直接的にメンテナンス業務に携わっている訳ではありませんが、今後の実務において大いに役立つ資格であると考えます。 そのためにも今後も継続的技術研鑽に努めたいと思います。コンクリート診断士に限らず、資格はその取得がゴールではありません。 むしろ取得した時点がスタートであると思います。

 4.受験者へのアドバイス等
 日々の多忙な業務や家庭生活のなかで、いかに効率良く勉強時間を確保するかが万人共通の課題かと思われます。私の場合、片道約1時間 の電車通勤時間を活用しました。このスキマ時間を有効活用することにより、仕事、家庭、趣味と試験勉強の両立が図れ時間確保のトレード オフを解消することができました。
 資格取得は単に専門知識の習得のみならず、日々の仕事に対してのモチベーション向上や自分の技術力に対する自信向上にもつながり非常 に有意義です。今回、私が取得したコンクリート診断士は急速に進展する施設の老朽化に対して、官民ともに専門技術者不足が叫ばれている 今日において、大いに役立つ資格の一つであると思いますので会員の皆様もぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。