■第30回欧州建設事業調査団

〜公式訪問視察先概要〜
ボタン チューリッヒ市(スイス)
 チューリッヒ市は、人口37万人のスイス第一の都市。チューリッヒ湖を中心として市街地 は多くの歴史的構造物が整然と街並みを構成、活気ある商業都市、国際的な金融都市でもある。
 同市では、88年から94年にかけて、住宅地域に小川を築造し、市民の憩いの場として開放し、 環境・景観対策としての成功事例とされるバッハコンセプト(小川開放計画)が策定された。
 このコンセプトは、「下水の処理を分流とし、小川の自然を創り出し、自然を都会に取り戻す」こととしており、 総延長15km(計画30km)の下水道について、地下部に汚水を、上部(地上)に雨水を流す二階建構造とし、地上部には緑のせせらぎを配置するものである。通常はその小川に水が流れているが、 大雨の時は小川の途中の調整池から下水道に流れ、地表部の洪水の危険を回避している。
 小川は自然の河床材料である砂レキを敷き、様々な土壌成分により植物が繁茂するようにし、 また、急勾配部にはコンクリートブロックによる段差をつけ、そのブロック下流部には魚槽を設けるなどの 工夫がなされている。
 同市の都市下水対策や都市環境の保全・景観施策等について調査する。

ボタン ハウテン市(オランダ)
 オランダの中央部にあるオランダ第4の都市ユトレヒトの南6kmに位置するハウテン市は、 人口3万人、面積420haのニュータウン都市である。
 16の居住区のニュータウンの外周には約8kmの環状道路が整備されている。ニュータウン 内での移動手段は自転車または徒歩が中心となっており、センター地区を中心に放射状に自転車幹線を 配置し、各居住区からこの幹線までを自転車支線で結ぶ自転車・歩行車道ネットワークが構成されている。
 自転車ネットワークと自動車ネットワークは基本的に分離しており、ニュータウン内では各居住区間を 自動車の入り口は1ヵ所だけで、居住区間を自動車で移動する場合には、一旦、環状道路に出なければならない。 また、交差点では自転車が優先する形態をとっており、T字路やL字路が組み合わされ、自動車を抑制し速度を低下させる 方式が採られている。自転車道と歩行車道は緑地帯と一体的に整備され、快適な空間を提供している。
 このように、通常は、自動車を抑制した街区としているため、高齢者、障害者、児童らに優しい街となっている。 当然、交通事故も少なく、自動車騒音、大気汚染も少なくなり、住みやすい環境となっている。
 同市の交通政策や、都市環境の保全対策等について調査する。

ボタン アーヘン市(ドイツ)
 アーヘン市はケルン市の西方60kmに位置し、ベルギー、オランダとの3国境に位置するドイツ最西端、人口25万人の都市で、紀元前3世紀のローマ時代からの温泉保養地で、歴史的建造物も多く、ドイツの古い都市と同様、中心部に教会、市場、市庁舎を有する。
 同市の中心部は丘陵地で石畳が多く、この中心部から道路が放射状に伸び下る。市街地は2本の環状街路で取り巻かれ、それぞれ特色ある土地利用が図られている。
 大戦終了後の復興の都市計画としてはコンペにより古いものを温存する方策が採られ、例えば、街路と広場については石畳を含めて旧来の形式を変更しないこと、建造物はなるべく旧来のものに復旧し、新設の場合も古くからの景観保持に配慮することなど、ローマ時代以来の町並み景観を極力維持する方針がとられている。
 アーヘン市域では、盆地でも湧水も多く、湿度も高く、排気ガスも滞留しやすいことから、市民の環境保全意識は高いといわれる。同市の方針として、風通しをさえぎる谷部での開発の規制や大気浄化に資する緑地保全を土地利用の中で配慮してきている。
 また、80年代、マイカーの増加とともに、中心市街部の交通渋滞や、大気汚染が深刻化したことから、90年代の初めから、中心部への流入規制として、乗り入れ禁止ゾーン、路上駐車の禁止、歩行者ゾーン、乗用車の共同利用、大型店の出店規制等を実施している。
 同市の都市計画における歴史的景観保全、都市環境の保全、市街地部の活力維持の方策等について調査する。

ボタン オルレアン市(フランス)
 パリの南西部100kmに位置するオルレアン市は、人口約11万人、都市圏人口25万人で、ロワール地方屈指の商業都市。都市の中央部には、ロワール川が流れ、旧市街地には大聖堂やジャンヌ・ダルク騎馬像のあるマルトロワ広場などを有する中世以来の歴史を持つ観光都市でもある。
 同市では、中心市街部の活性化を図るため、公共交通として新型の路面電車(LRT)新しく導入する計画が進められている。
 路面電車の導入にあたっては、自動車交通との役割り分担がポイントで、同都市では、中心市街地への通過交通防止のためのバイパスの整備や、公害から中心部へのアプローチに流入ゲートを設置することなど、中心市街地への自動車交通の抑制を行っている。また、中心部では、一方通行化することにより、中心にアクセス可能としているが、通過はできない。さらに、LRTの各駅に自転車置場を設置し、自転車ネットワークとを組み合わせることにより、整備効果の増大を図っている。
 LRT導入の具体的事業プロセスとしては、市民への情報公開を目的とした事前協議(96.1〜2)、公開討論(96.12〜97.1)、公益宣言(98.6)がなされ、正式に導入が決定された。街を南北に貫く路線が第1号として供用。
 古い歴史の面ばかりではなく、新しいまちづくりに取り組んでいる都市であり、同市の中心市街地の活性化施策、関連都市施設の整備や環境対策等について調査する。


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